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JUBAN DO ONIの「からだもこころも気持ちよい下着」の秘密とは

少し高くても長持ちする、本当に良いものを

ーーでは実際に商品を見ながらお話を伺っていきたいと思うのですが、はじめは基本的にパタンナーの深沢さんとお二人でアイデアを出しながら商品を作っていったんでしょうか?

そうですね。二人で下着への課題感を出して、ああでもない、こうでもないと言いながら作っていきました。作っては実際に試して、意見を出しての連続ですね。

商品のベースの色は一緒に選んで、ステッチの色はね、ほとんど深沢が選ぶんです。彼女がいろいろ考えて出してくれた案の中で、どれにしようかと相談していますね。

彼女はファッションが大好きな人だから、普段ハイブランドや個性的な服を着ていて、もともとこういう体に優しい下着自体には興味もなかったんだけど、実際に作って着ているうちに目覚めたみたいです(笑)。

ーーたしかに、どんなファッションでも中に身に着ける下着は心地よいに越したことないですもんね。JUBAN DO ONIという名前のとおり、襦袢からヒントを得ているとのことですが、そこに着目したのはどんな理由が?

日本の下着の歴史を調べている中で、着物だった時代の女性は腰巻を巻くだけだったことを知って、不便なこともあったかもしれないけれど解放感があるんだろうなと思ったんですよね。

下着って、素材と同じくらい形も大事で、いくら素材が良くても締め付けが強かったり食い込んでしまったりしたら身に着けなくなってしまうと思うんです。

わたしとしては本当はもはや何もはかないノーパンが一番おすすめだけど、現代では難しいからなるべくノーパンに近い形の下着を作りたかったんです。

ーーそこでまず生まれたのが、こちらのパンツ。

はい。まずはじめに、ショートとミドルとロングの3種類の丈のパンツを作りました。ウエスト部分のリブの丈の長さが違って、一番長いロングはおへそにかぶるくらいですね。

ショートはあまり人気がなかったので早々に作るのをやめてミドルとロングに絞っています。基本的に縫い目が表側になっているので、肌にあたりません。

ーー特にこだわった部分でいうとどのあたりでしょうか?

一番はサイズですね。M、M+、Lの3つのサイズ展開になっています。ゆったりはいてもらいたいのと、わたし自身いつもMかLで迷ってしまうので「M+」を作りました。ウエスト部分は同じ大きさですが、脚周りのゴムを長めにとっています。

Mが小さいわけではないけれどゴムがきつく感じたり、Lだと少し大きいと感じる方にぜひ試してみてほしいですね。

それでもゴム紐を一切使わないものも作りたくて、リクエストが多かったボクサータイプを作りました。こちらはM、Lの2サイズ展開です。

ーー黒川さんご自身の悩みや課題感が商品にしっかり反映されているんですね。素材はけっこうしっかりしていますね。

そうそう。天然素材を使うことは決めていたんだけれど、たまたま生地問屋さんを回っている時に、メートル単位で買えるオーガニックコットンのいい生地あるよと教えてもらって。しっかりしていてよかったので、ベーシックラインの商品で使っていました。

今では商品の生産数も増えたことで、生地の選択肢も広がりました。単にオーガニックコットンを買い取るだけではなく、その地域で暮らす人々が自立していくためのさまざまな仕組みを構築しているbioRe(ビオリ)プロジェクトからうまれた、bioRe cotton(ビオリコットン)を使って「FEEL」という新しいラインを作りました。

「FEEL」はベーシックラインに比べると生地が薄くてやわらかいのが特徴。形はボクサーパンツのみで締め付けも一切なく、よりノーパンに近い感覚ではいてもらえると思います。

ーーすごく心地よさそう。お客さんの声を拝見すると「2年以上使っていても全く劣化していない」とあって、その耐久性にも驚きました。

そうなんです。しかも、ネットに入れてもらえれば洗濯機で洗ってOK! 下着は一応消耗品だけど日用品でもあるので、ある程度の耐久性は欲しかったんですよね。下着としての寿命をきちんと全うするものがいいなあと。

だから値段は少し高くなったとしても、そのぶん長持ちのする「ちゃんと良いもの」を届けたいという思いで、商品を作っています。

ーー素敵です。パンツだけでなくブラジャーを始めたのはどんな経緯があったのでしょうか。

最初は、ブラジャーに適した天然素材の生地やそれに合わせた縫製の工夫が難しかったので、パンツしか作っていなかったんです。でも、やっぱり上下お揃いで欲しいというお客さんの声が多くあったんですよね。

先にカップ付きのタンクトップを作って、一年前にようやくブラジャーを発売しました。ありがたいことに人気商品になりましたね。

ーー形的にはスポーツブラに近いかなと思うのですが、こだわりポイントは?

金具やストレッチ素材を一切使っていないんです。体を締め付けないけれどきちんとサポート力があるのが特徴。アンダー部分も幅広にしているので、食い込みません。

デザインと機能性の両立にあたって、葛藤はいつもあります。今後はもうちょっと華奢なデザインのものも作ってみたいですね。

ーーJUBAN DO ONIでは、レディースだけでなくメンズの商品も出されていますよね。

はい。レディースと同時進行で始めました。わたし、男性の下着の方が締め付けがひどいと思っていて。

周りの友人に聞いてみても、新品の硬いゴムのパンツがだんだん伸びてきて、逆にちょうどいいからテロテロのものをずっと使っているという人が多いんです。

ーーたしかに、そういうイメージかも……。

だったら最初からきつくないものをはけばいいと思うんです。メンズはどれくらい売れるか未知数だったから、最初は本当に少ししか作らなかったのですが、想像していた以上に売れて。一回はいてハマった人はずっと買ってくれています。

そういえば、「腹巻パンツ」は男性からのリクエストで作ったんです。お腹が弱い男性に人気で、冷房対策として夏でもつけている方がいるくらい。「だったら女性の腹巻パンツも作っちゃうか!」と、レディースも一緒に販売しています。

ーーへええ! たしかに夏でも冷房下でずっと仕事しているとお腹冷えますしね。よさそう。

メンズとレディースはそれぞれ同じ配色で商品を出しているので、カップルでおそろいができますし、もっと広げていきたいですね。

ーーパートナーや家族など、大切な人にプレゼントしたくなりました。

ぜひぜひ! あと実は、下着作りへの思いの一つとして、若い子からおじいちゃんおばあちゃんまではけるものがあればいいなというのがあって。

特にわたしの親世代の60~70歳以上の方たちは、下着の選択肢が少ないからぜひ試してほしいんです。実際、今は20~80代くらいの方たちが使ってくれているから、それはすごく嬉しい。

ーーすごい幅広い……! いろんな年代の人に合うって素晴らしいですね。結構、お客さんからの声が届くことが多いんですか?

そうなんですよ。立ち上げから5年が経ちましたが、お手紙やメールを通してお客さんとたくさんコミュニケーションできています。

例えば、胃炎持ちでブラジャーだとアンダーの部分が締め付けられて胃が痛くなっちゃうけれど、JUBAN DO ONIのカップ付きタンクトップはアンダーにゴムが入っておらず、締め付けがないからよかったというご連絡をいただいたりとか。

入院中や妊娠している時にも重宝したという声もありましたね。妊婦用の下着はお腹が大きくなった時専用のものが多いけれど、うちのパンツは産んだ後にも使える。もともと想定していたわけではないけれど、役に立ったシーンや意外な使い方を教えてもらえて嬉しいです。

ーー個人でやっているブランドだからこそのお客さんとの距離の近さというか。

そうそう。先ほど何度か話題にも出ましたが、「こういう商品がほしい!」というリクエストもありますしね。大きなメーカーではないぶん小回りが効くから、取り入れられるものはすぐ取り入れて、お客さんに伝えられる。そういうふうに、みんなで作っている感覚があるんです。

もちろん売れてほしいけど、商業ベースで何を作るかを考えていないから、わりとフレキシブルに動けていますね。

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