お化粧やヘッドドレスは裸になって本来の自分を見つけること
ヴィヴィアンさんが今のスタイルになったきっかけを教えてください。
大学時代にゲイバーでバイトをしたことがきっかけですね。それまでは「ドラァグクイーン」という言葉も知らなかったのですけど、そこで出会ったママさんがお化粧を教えてくれたんです。
ゲイバーでは独特なメイクとドレスを着ている人がたくさんいて、衝撃を受けました。例えば舞台なら幕が閉じたら終わって、出演者もメイクを落として家に帰りますよね。だけど、彼らは普段もずっとメイクをしていて「幕が終わる」という感覚がないんですよ。ずっと「現実の生」を生きている感じ。それが自分には合っていると思いました。
ちなみに、唇を青く塗っているのには何か理由があるんでしょうか。
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」というエッセイがあるんですけど、そこでは「日本の美は線や形にあるのではなく、陰影の綾(あや)にある」と西洋近代化によって失われていく、日本人の美意識について論じています。
その中に、まだ電燈がなかった時代の建物の中は真っ暗で、女性は着物を着ていたから首から上しか存在していなかった。だから京都の商売女は口を青く塗って、そこに螺鈿(らでん)をまぶして、時にはお歯黒をして口の中にすら闇を求めていたという一説があり、それを自分なりにアレンジしています。
この日はネイルも唇と同じ青色でした!
青い唇がそういった意味だったとは……! ヴィヴィアンさんがお化粧をすることでご自身の中で何か変化はありますか?
毎年ハロウィンになると若者たちがコスプレをして、「自分じゃないものになる!」って楽しんでますけど、私の場合は化粧をすることは何かに変身するのではなく、「自分が裸になっていく」感覚なんです。すっぴんだとテンションも違うので、化粧は毎日のルーティンに必ず入れています。
そしたら、今日被って着て頂いたヘッドドレスも似たような感覚で身に付けているのでしょうか?
ヘッドドレスも本来の自分を見つける行為に近いですね。ただヘッドドレスは普段感じないものをキャッチする「アンテナの役割」があって。
要するに体の中には神経があるんだけど、それを頭の先から外に出して延長している感じです。他にも、ヘッドドレスを身に付けていると幅広い年齢層の方からよく話しかけられるんですよ。なので、人の心を結びつける大切なコミュニケーションツールにもなっています。