様々なシーンで仕事に役立つ共感力
共感のある対応では、先ほどの例の「まずい」というクレームに対して、「まずい」という言葉そのものではなく、相手が事実をどう受け止めたかに焦点を当てて謝罪します。
「まずい」という言葉の背景には、「期待していたものと違った」という出来事(事実)が想像できるでしょう。それを相手がどう受け止めたのかを考えると、「残念だと感じた」のだと推測できそうです。
そうすると謝罪は、商品がまずいか否かの議論に関係なく「残念な思いをさせた事」に対するものになります。期待をして購入してもらった背景を思えば、がっかりさせてしまった事に関しては心から「申し訳ございません」と謝罪できるのではないでしょうか。
また、より共感しようとすると、足りない情報、つまり「何が期待と違って残念だったのか」と疑問も生まれてきます。自然に「ご期待に沿えなかったのはどのような点か、教えていただけますか?」と会話を続ける流れになるでしょう。
「味が薄い」など具体的な指摘を得られれば、商品の改良・開発に役立てられます。有益な情報には、心からお礼も言えそうです。「感謝する謝罪」につながれば、相手の気持ちも少し和らぐのではないでしょうか。後日、意見を反映した商品を販売すれば、購入してもらえるかもしれません。
このように共感力を発揮できれば、相手に与える印象が良くなるのはもちろん、自社のメリットにつながる情報を引き出せる対応が取れるのです。「共感力が高い人」とは、会話する中で必要な情報を見極めながら、相手の考えや気持ちをしっかり把握していける人だと言えそうです。
共感力をもって相手の気持ちをしっかり把握できれば、クレーム対応や商品の提案のような顧客と直接やりとりをする業務はもちろん、消費者のニーズを考慮した商品開発のような業務にも役立ちます。また、職場内でも、共に仕事をする人々との間で良好な人間関係を構築でき、円滑に仕事を進める事ができるのではないでしょうか。