作り手の数だけ、種類がある。
――最近クラフトビールが人気ですよね。クラフトビールって一言で言うとどんなビールなんでしょう?
そうですね、「オリジナルのレシピで、職人さんが手作りするビール」と、言えるでしょうか。でも最近はオートメーション化された大きな工場で作っているところもあるので、一概には言えないのですけど。
――「オリジナルレシピ」がポイントでしょうか。
アメリカでは自分でビールを作って楽しむ文化があるんです。以前、オレゴン州にあるポートランドへ視察に行ったのですが、人口65万人ほどの街にクラフトビールの醸造所が80カ所近くあるんです。自宅でオリジナルのクラフトビールを作る愛好家も多いんですよ。
――80カ所ってすごいですね。さらに自宅で楽しむ方まで!いいなぁ、日本では自宅でお酒は作れないですよね。
酒税法があるので難しいですね。でも、クラフトビールの醸造体験ができるブルワリーも国内にいくつかあるので、興味のある方はトライしてはいかがでしょう。日本でもビールを作って楽しむ文化が広まればいいなぁとは思うんですけど。ポートランドではコンテストも盛ん。職人さんや愛好家同士、出来上がったクラフトビールをお互い飲み合って、良いところは自分のビール造りに取り入れるんです。共有の文化というか、お互いを認め合っていて。そういうのいいですよね。
――良いところを認め合ってさらに美味しいビールができるんですね!ところでクラフトビールには、どんな種類があるんでしょう?
皆さんが日頃飲んでいるビールは『ピルスナー』がほとんどだと思います。ピルスナーとは、日本の大手4社のメーカーが作っている、のど越しスッキリのビールですね。キレがポイントです。
――最初の1杯、ですね!『ラガー』というのもよく聞きますが、それもビールの種類でしょうか?
ラガーというのは、発酵方法ですね。大手のビールはほとんどラガーです。下面発酵といって、10℃前後の低温で発酵させたビールでスッキリとした味わいが特徴です。『エール』というのもあります。これは上面発酵といって、20℃前後の高温で発酵させたビールでフルーティな味わいが特徴です。もう一つ、『自然発酵』もあります。文字通り自然のまま発酵させたビールで、酸味が特徴です。
――発酵方法以外に、どんな違いがあるんですか?
クラフトビールは「作り手の数だけある」といっても過言ではないほど、たくさんの種類があります。たとえば、農作業の合間に飲む『セゾン』というビール。ベルギーの農家さんが昔から水代わりに飲んでいた、喉を潤すためのビールです。アルコール度数はやや低めです。
修道院で作られる『トラピストビール』というものもあります。これは、現金収入や巡礼者に振る舞うために作られています。『シメイ』などが有名です。こちらはアルコール度数が高め。歴史あるクラフトビールは多く、調べると面白いと思います。
――修道院のビールは、ありがたい感じがします。ところで初心者にオススメなのは、どんなタイプでしょうか?
そうですね。まずは『ヴァイツェン』はどうでしょう。小麦で作られたビールで苦味が少なく、爽やかなのど越しです。いつもはピルスナーという方が、ちょっと気分を変えたいときにもぴったりです。
――多分、私それ好きです。知らずに飲んでいた気がします(笑)。
『ホワイトエール』も人気があります。こちらも同じく小麦を配合したビールですが、コリアンダーやオレンジピールなどのスパイスがアクセントになっています。
――多分、私それも好きです(笑)。
どちらも女性に人気がありますね(笑)。もうちょっとだけクセを感じたいなら、『ペールエール』を。華やかなホップの香りと、明るめの銅色が特徴です。冷やしすぎないのがポイントです。
――洋画を見ていると、常温のまま瓶ビールを飲むシーンを見かけますが、あれはペールエールだったんですね!
ビールにも適温があって、ぬるめが美味しいものもあるんです。あと今の時期は『スタウト』、いわゆる黒ビールもオススメです。ヨーロッパでは冬のビールと言われています。ローストした麦芽を使うため色は真っ黒。コクがあって、赤ワインのようにゆっくり楽しみます。
――ビールにも季節感があるんですね。黒ビールは少しクセがありますよね?
好みが分かれるところですね。そのクセが好きという方と、苦手という方と。黒ビール初心者の方は、ピルスナーとハーフ&ハーフにするのもオススメです。ぐっと飲みやすくなります。
――それなら、私にも飲めそう。今度トライしてみます!
そして今一番の注目は、『IPA(インディアペールエール)』ですね。ホップを贅沢に使った、コクと苦味が特徴のビールです。最近は飲みやすいIPAも随分と出ていますが、こちらは少し飲み慣れてから、トライするのが良いかもしれません。また種類が同じでも、造り手によって味はさまざま。少しずつ色々な銘柄を試して、好きな味を見つけてほしいと思います。
▲kanoko BEERオリジナルの『ヤマブキエール』は紅茶とゆずと山椒を使用。エールビールのふくよかさと柑橘の爽やかさ、ピリリとスパイシーな後味が絶妙。クラフトビール初心者にもオススメです
――クラフトビールは種類が豊富で、いざ購入する際、迷ってしまうんですよね…。買い方のコツなどがあれば教えてください。
まずはお店の方に相談するのが良いと思います。どんな味が好きか、「苦いのは好きじゃない」とか「スパイシーなのがいい」とか。いろいろと話を聞きヒントをもらって、ご提案したいと思います。
――遠慮しないでお店の方に聞くのが良いんですね!
「人気の銘柄をください」という買い方もいいと思います。売れているものは多くの人が好きな味なので。
――最近は、身近なスーパーでも、クラフトビールを見かけるようになりましたよね。
そうですね。スーパーなどで選ぶのも良いかもしれません。値段も手頃で失敗しにくいと思います。何か一つ基準ができると、次が選びやすくなると思います。
――クラフトビールを料理に合わせるコツはありますか?
ポイントは色を合わせること。たとえば、kanoko BEERのブラウンエールは、シナモンやアニスがスパイスとして入っていますが、豚の角煮や酢豚など、茶系の料理との相性がとても良いんですよ。
――ビールを色で選ぶ、って面白いですね!
ワインと似ているかもしれません。魚や鶏肉なら白系のビール(ヴァイツェンやホワイトエール)を、牛やマグロなら赤系のビール(ペールエールやブラウンエールなど)を。ソースの色とのペアリングもありますね、ホワイトソースなら白、デミグラスなら赤。スイーツを合わせるのも意外とオススメなんです。
――スイーツですか?それは意外です。
ぜひ黒ビールにチョコレートを合わせてみてください。クラフトビールは、ゆっくりと時間を楽しむビールでもあるんです。音楽を聴きながら、好きな本を片手に、ビールとスイーツで。リラックスタイムの傍にぜひ、クラフトビール楽しんでもらえたら嬉しいです。
▲コーヒーの代わりにクラフトビールを。それだけで、贅沢な休日になりますね!
――ところで、かの子さんがクラフトビール造りに目覚めたきっかけは?美味しいクラフトビールの話は、後編へ続きます!
編集部のここが「#たしかに」
これまであまり知識もなくビールを飲んでいましたが、料理との合わせ方など、目からウロコの情報でした。「ワインと同じように選ぶと良い」。色がヒントになるとは、これも面白い発見でした。原稿を書きながら、クラフトビールが飲みたくて仕方ありません(笑)。原稿を仕上げたら、お店へチェックしに行きたいと思います。かの子さん、ありがとうございました!
Kanoco BEER & MARCHE(カノコビア&マルシェ)
〒215-0011 川崎市麻生区百合丘3-24-36-101
044-712-3088
営業日:木金土・不定休 12:00〜18:00
https://m.facebook.com/kanocobeer/
※クラフトビールは通信販売も可能です。詳しくはお問い合わせください。
取材・執筆:松村聡子 編集:#たしかに編集部