社会の多様性よりも、個の多様性に気付くべき
自分なりのスタイルをしっかりと確立されていますが、小さい頃は自己表現で悩んだ時期はありましたか?
中高生の頃は自分の性別や性別的役割を押しつけられることへの違和感があって、ずっと「自分の居場所はない」と思っていました。
それで大学生の頃にゲイバーの世界に入ったんですけど、その中ではゲイバーや水商売らしい振る舞いが求められて。自分はその「らしさ」から逃れてきたはずなのに、世の中では与えられた役割を振る舞わなければ、人々が納得しないと気付いたんです。
ここ最近、LGBTQの人たちへの権利が話題になっていますが、一方で漫画やドラマなどで観るLGBTQキャラクターの描き方には、「LGBTQらしさ」の押し付けを感じる場面があって、誤解を産んでしまうこともありますよね……。
語弊を恐れずに言うと、私はLGBTQ反対派なんです。「あなたがLで、あなたがGで、BでTって」という風に分類するのって意味がないと思っていて。もしそれが必要なら「あなたはそばかうどん派か?」でも同じように人を分類してもいいと思うんですよ。
性的指向を分類することは、そのくらい大したことではないと?
はい。どんな人だって権利や人権はあるので、それを尊重するのは当たり前。だから私は「LGBTQ」という言葉自体がなくなることが最終目標だと思います。言ってみれば、みんなマイノリティなんですから。
そんなヴィヴィアンさんが目指している「多様性のある社会」とはどういったものなのでしょうか?
性別や職種、年齢、趣味嗜好などでカテゴライズされない社会になること。今、社会では多様性が求められてきてるけど、多様性に満ちた社会性づくりよりも、ひとりの人間の中にある多様性に気付いた方がいいと思っております。
家族や恋人、もしくは他人といる時に人はそれぞれ性格が変わるように、人の本質は歪な多面体だと思うんですよね。そこに気付くことで、他人と多種多様なコミュニケーションが出来ると思います。
それこそヴィヴィアンさんのような存在が、多様な人が生きる社会のあり方を考えるきっかけのひとつにもなりますよね。
そうなってくれたら嬉しいですね。派手なメイクやドレスアップはひとつのアイコンでしかなくて、こうして社会の中で名付けられない立場として存在することが、私の存在意義なのかなと思っています。
それに今の若い世代に伝えたいのは、どんな時代でも好奇心と行動力が必要だってこと。後は、「いかに自分が呪われているか」を自覚して、自分と見つめ合ってほしいですね。
えっ、呪いですか……!?
呪いとは不吉な意味ではなく、自分の中にどうしても説明できない強い動機や存在意義のことです。他人から狂っていると思われるほど、自分の好きなことに呪われて、その姿勢を貫いてください。
今後ヴィヴィアンさんがやってみたいことを教えてください。
お喋りとアートが好きなので、それを絡めて美術系の学校を作りたいですね。例えば絵の描き方を教えるというよりもコーヒーの入れ方を教えてくれるような、技術面よりも精神面を伝授する先生になりたいです。名前は「ヴィヴィアン学校」なんてどうでしょうか(笑)。
編集部のここが「#たしかに」
ここ最近、よく耳にする「多様性」という言葉。多様性について会話する時、間違った言動で知らないうちに誰かを傷つけてしまっているかもしれない。だからその話題を避けている自分がいました。
だけど、今回のヴィヴィアンさんと多様性について「対話をすること」で、相手を理解すると同時に、無意識だった自分の価値観や考えに気付くことができました。
ヴィヴィアンさんが「人の本質は歪な多面体だと思うんですよね。そこに気付くことで、他人と多種多様なコミュニケーションが出来るんだと思います」と話していたように、多様性とはジェンダー、人種などの枠を超えて「個の多様性」を認めることから始まっていくんですよね。
ジェンダーや国籍などの概念を取っ払って、一人一人の個性を当たり前に受け入れていく。 このことが真の多様性社会を実現するヒントかもしれません。
ヴィヴィアンさん、大切なことを教えてくださりありがとうござました〜!
取材・執筆:吉野舞
撮影:番正しおり
編集:#たしかに編集部