紆余曲折を経て、イギリスで見つけた本当の気持ち
――現在、まきさんはPerch.以外でどんな活動をしているんですか?
個人では、レシピ開発やフードコーディネートといった裏方のお仕事をする他、料理家としてメディアに出演したり、連載記事を書かせていただいたりすることもあります。
新型コロナウイルスの影響で現在はお休み中ですが、以前は『北欧、暮らしの道具店』を運営されている株式会社クラシコムさんで社員食堂も担当していました。
――幅広いですね! もともと料理家志望だったのでしょうか。
全然違うんです(笑)。大学進学で長野県から上京して、大学院までずっと心理学を学んでいました。
その後、大手商社に事務員として就職し、一度会社員を経験しています。当時は仕事や人生についてきちんと考えていなかったから、定時で帰れることを第一優先で決めてしまったんですけど、いざ働いてみたらとにかく合わなかった(笑)。
――そうだったんですね(笑)。事務のお仕事をされていたなんて、驚きました。
もちろん勉強になることはたくさんあったんだけど、結局1年で辞めてしまいましたね。
そのあとは、誰かのためになる仕事をしたいと思ったので、学生時代に心理学を学んでいたことを生かして、臨床心理士の資格をとりました。教育相談室という機関で、心理カウンセラーとして4年間働いていたんです。
――それもまた、今のお仕事とは全く違う世界ですね……!
そうなんですよ(笑)。その間に結婚して、イギリス駐在になった旦那さんと一緒にオックスフォードとロンドンに合計1年くらい住んでいたんですけど、30歳の頃に離婚しました。わたしにとって価値観が変わる大きな転機でしたね。
結婚していた頃は、誰かに何かしてもらうことばかり考えていたんだと思います。「既存の価値観のいわゆる王道の人生を進むことでは、自分は満たされないかもしれない」となんとなく思っていたけれど、やりたいことに向き合って生きていくのは途方もないなって。でも離婚をして、わたしはわたしを騙し続けることはできないと気づきました。
――そう気づくに至る、何かきっかけがあったんですか?
イギリスの人って、とにかく自分の人生を自由に生きている人たちばかりなんですよ。「実は料理の仕事がしたいと思っているんだけど」と言ったら「え、今すぐやれば?」みたいな(笑)。「あやこは料理が上手だし、すでにやっているからすぐ仕事になるよ」っていろんな人に言われたんですよね。
料理は好きだったけれど、どこかで学んだ経験もなかったし、どこかで「わたしなんて」と思っていて。でも「あなたがやりたい気持ちと、それに真摯に向き合うことが一番大事」という周りの価値観に感化されて、料理をやっていこうと決めました。