キャラクターを描くのが好きだった
今日はきくちさんの人生観について聞きたくて伺いました。まずは、絵を描き始めたきっかけから教えてください。
小学校低学年のときでした。絵が上手ないとこがいて、「自分も上手いって言われたい!」という気持ちで描き始めました。今も全然上手くなれてないですが!
当時は『バトルえんぴつ』が流行ってて、ノートに『ドラゴンクエスト』のキャラクターとか。
バトルえんぴつ!(笑) 小学生らしい。その頃からキャラクターを描く楽しさのようなものを感じていたんでしょうか。
そうですね。中学の頃、自分の机に描いていた絵が担任の先生にバレたことがあって。怒られると思ったらなぜか褒められたんです。それは嬉しかったです。その後高校でも、同じように絵はずっと描いていました。
学生の頃から、絵を描くことを仕事にしたいという気持ちはあったんですか?
当時は全く思っていませんでした。あくまで趣味でしたが、20歳を過ぎた頃に「改めてイラストを描いていこう」と思い、PCやプリンターを買ってまた描き始めました。
好きだったことに、また取り組み始めたんですね。
それからアルバイトをしながら、『mixi』に絵をアップし始めました。mixi内にはいろいろな趣味のコミュニティがあって、「絵が好きな人集まれ!」とか「グラフィックアート好きな人集合!」のようなところに、みんなイラストをバンバン上げているんです。それに乗じて、僕も描いた絵をアップしていました。
今でこそTwitterやInstagramでさまざまなイラストレーターさんが活躍していますが、当時はmixiだったんですね。
はい。そこでたまたま僕のイラストを見た、イベント運営をしている方から「うちで展示しませんか?」って連絡がきて。
おお、すごい。
正直、何もわからない状態だったし、怖さや不安もあったけれど「やります」と答えました。渋谷のクラブハウスでの音楽イベントで、初めて自分の絵を展示することになったんです。
ちなみに、そのときはどんな絵を?
何を描いてもOKだったのですが、こんなカエルの絵を描きました。
リアルなカエルですね。こう見ると、今のきくちさんのイラストのイメージとかなり違いますが、今の方向に転換したのはどのタイミングで?
このカエルのような一枚絵を描くのも好きですが、イラストレーターとしてこの方向性でやっていくのは不安だったんです。自分の個性を出していくのも難しい。そこで自分が本当にやりたいことを考えていく中で、やっぱり僕はキャラクターを描くのが好きだということに気づいて。
小学生の頃もキャラクターのイラストを描いていたんですもんね。
そうです。自分が好きなものを再認識してからは、キャラクターを描き始めました。はじめは台詞も吹き出しもない、ただのイラストでしたが、それだとキャラクターの良さや性格が伝わりづらい。なので、台詞のある1ページの漫画などを描き始めました。
なるほど、キャラクターをより魅力的に伝えるために漫画にしたということか。
はい。その描き溜めたものを自分で本にして、持ち込みができるイベントに出したら、Web漫画の編集部の方に「面白いね」って言っていただけて。そこで連載させていただけることになったのが、『SUPERどうぶつーズ』です。
▲ねずみのトニー、うさぎのコニー、ぞうのポニーの仲良し3人組の「どうぶつーズ」の日常を描いた物語。©リイドカフェ
おお! ついにWebで連載が。
これが僕の中では、漫画家としての始まりだと思っています。1話完結だったので、読み終わった後に読者の方に何かを感じ取ってほしいなと思って描いていました。
▲「SUPERSUPERどうぶつーズ」より引用
ダイレクトですね(笑)。毎回、伝えたいメッセージがきちんとあるんですね。
はい。作品を作るときには、何かしら伝えないといけないという意識があります。キャラクターの個性を伝えたいし、なるべく人に影響や気づきを与えられる作品を作りたいと思っています。
『どうぶつーズ』では登場するキャラクターたちの台詞やふるまいで、『100日後に死ぬワニ』では物語全体を通して、僕の思いを代弁してもらっている感覚です。
なるほど。きくちさんが漫画やイラストを描く上で、譲れない部分や大切にしていることは何かありますか?
うーん……。僕、「誰々っぽいね」って言われたくないんですよ。
著名な漫画家さんとか。
そうです。やっぱり漫画やイラストを見た瞬間に「これ、きくちゆうきじゃん」って思ってもらえるくらいの色を出していきたいです。
きくちさんはその自分らしさをどう模索して、ここまで辿り着いたんですか?
絵が上手い人はいっぱいいます。もちろん僕も上手くなりたいけど、一番に重きを置くのはそこではないかなと思っていて。僕は毎回「変えない」ことを意識しています。
こうやって見てみると、たしかにキャラクターの目やタッチに共通点を感じます!
なるべく「きくちゆうきの絵だな」と気づいてもらえるように、目の描き方や線を意識をしながら描いています。
そう言われて改めて見てみると、面白いですね!