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『100日後に死ぬワニ』漫画家・きくちゆうきさんに聞く悔いのない日々の過ごし方

死ぬときに後悔しないために生きている

『100日後に死ぬワニ』のテーマにも繋がりますが、きくちさん自身、独自の死生観をお持ちなのかなと思っていて。

そうですかね?

過去のインタビューやブログにあった「死ぬために生きている」という言葉がすごく印象的でした。死ぬときに良かったなと思えるように生きていると。そういった価値観を持つようになったきっかけをお聞きしたいです。

いろんなことを経験したので、そういう考え方になったと思っています。僕、25歳のときに一度、印刷会社に就職したんです。

驚きました。

イラストを本格的に始めてからはずっとアルバイトをしていましたが、一度サラリーマンになることを決めたんです。でも働いているうちに、自分のこの先の人生、全部見えちゃうなあと思って。

たしかに、会社に勤めているとどうしても毎日がルーティン化してきますもんね。

そうなんです。当時の自分の場合ですが、平日は朝9時に出勤して、夜8時くらいに家帰って寝る。土日はどこかで遊んで、たまに旅行に行く。それが65歳くらいまで続いて、自分の人生終わっていくのかなあと何となく予想ができてしまったときに、このままじゃ自分は後悔するなと思って。死ぬときに「もったいないことしたな」って思いたくなくて。

思いたくないですね。後悔したくない。

そんなことを考えたりして、3年くらいで会社を辞めて独立しました。やりたいことがあるんだから全力でやった方がいいなと思って。

そんな思いや経験を踏まえて、『100日後に死ぬワニ』を描きました。終わりがあるワニと、それを見ている読者。終わりがあるのはワニも読者も同じだからこそ、読み進めていくと何か気づいてもらえるかなと思いました。

きくちゆうき たしかに

いつ自分が「ワニくん」の立場になるかわからないわけですしね。

そうなんです。自分の時間を自由に使えていなくて辛いなら、考えた方がいいかなと思う。もちろん、ある程度の準備は必要だけど「そうこうしているうちに、終わっちゃうよ!」って。

「終わっちゃうよ!」って、終わりに向かうワニくんを見守っていた読者全員が思ってたことですね……。ただ、終わりがあることを意識するのって、すごく難しいなと思うんです。たとえば何かの「終わり」に触れたときに瞬間的に、「後悔しないようにこれから大事に生きよう」と思っても、日々生きているとどうしても薄れていってしまう。それを意識しつづけられるのはなぜなんでしょう。

僕も常に意識しているわけじゃないです。ただ、人でもものでも必ず「終わり」はあるので。人生100年時代と言っても、僕自身世の中の見たいものややりたいことを考えると長くないなと思っています。

なるほど、もしかしたらきくちさん自身、生きているうちにやりたいことがたくさんあるからこそ、タイムリミットを意識せざるを得ないのかもしれないですね。

そうかもしれません。周りの人やものにも「終わりがある」ことを頭に置いておけば、日々の選択も変わってくるんじゃないかなと思います。

極端なことを言えば、今の時間が人生の最後になってしまうかもしれないですもんね。そういう選択をするようになった背景には、やはり過去の経験があるのかなと思うのですが。

あとは前に『イエスマン』という映画を観たのもきっかけかもしれません(笑)。結局、自己満足の部分も大きいのかも。自分のためだとも思って手助けしてるところも少なからずあるから。

それで誰かが助かったり救われたりするなら、win-winですよね。ここまでお話を聞いていて、後悔しない毎日を送るための気づきをすでにたくさんもらっている気がします。

本当ですか? うれしいです。僕は自分の力で社会を変えることはできないけれど、きっかけを作ることができたらいいなと思っていて。言葉で言うよりも、作品で伝えたいという気持ちが強いですね。自分が客観的に読んでも何かに気づけるような作品を、自分の手で作りたいと思っています。

そういう意味で、『100日後に死ぬワニ』は結果的にわかりやすく伝えられたのかなって。実際に「自分の人生を見つめ直した」とか「(終わりがあることを実感して)周りの人に感謝のメールを送った」という声もいただきましたし、一人でも行動に繋がった人がいるなら、ワニの漫画を描いたことに意味はあったかなと思います。

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