プラスチックの経年変化を楽しむ
(「plastone」を手に取って)色味が可愛い〜! これは何から出来ているんですか?
もう使われなくなった「子供のおもちゃ」から作られています。この緑色の部分は確か、新幹線の「はやぶさ」で、赤色は「ラッパのおもちゃの吹くところ」です(笑)。おもちゃの他にも3Dプリンターから出たゴミも混ぜて固めると偶然、こんな大理石のようなマーブル柄になりました。
えっ、この色味は偶然なんですか!?
おもちゃを電気釜で溶かして混ぜていく中で、色を調節しているとこんな風になったんですよ。この造形も目指していたものではなく、手を動かしていくうちに「じゃあ、この形にしてみようか」って決めました。
「plastone」は積み重ねもできて、遊べるようになっているんですね。
そうなんです。メンバーの一人が「キャンプ中に子どもと石積みをしてよく遊ぶ」って話していて。そこから、「プラスチックで石積みのオブジェを作ったら面白んじゃない?」ってアイデアが出てきて、積み上げられる形にしました。子供と一緒に遊べるような製品にもなっています。
元々、プラスチックのオブジェを作ろうと思った理由ってなんでしょう?
FICCで環境問題を学ぶために開催された株式会社アスエネさんとの勉強中に、「木みたいに経年変化するプラスチックがあればいいのに!」と思ったことがきっかけなんです。
実は私、普段の生活の中で全然好きになれないプラスチックの洗剤容器があって、ずっとそれを見てモヤモヤしていて……(笑)
何がそんなに好きになれなかったんですか?
容器があまり可愛くなくて、愛着がどうしても湧かなかったんです。身の回りって、出来れば自分の好きなもので囲みたいじゃないですか。
なので、ラベルを剥がしたりしてみて色々試してみたんですが、毎日見るたびに「なんか違うなあ」って感じで。
気になり始めたら、居ても立ってもいられなくなる気持ちが分かります(笑)
社内勉強会中のチャットにアイデアを一言投げてみると、代表の森や他のメンバー達が「面白いじゃん!」って後押ししてくれたので、アイディアを膨らませてみることにしました。
その日に多摩美術大学時代の同級生で、気心が知れたデザイナーの友人二人に声をかけて、2021年3月に「Life Plastic」プロジェクトが始まりました。
このプロジェクトはどのように進んだのでしょうか?
最初の2〜3週間はアイデア出しやプラスチックのゴミ問題のリサーチをしながら、日常生活の身近なものを色々な軸で分けて捉え直していったんです。その時に自分たちが大事にしたい物は「時間の経過を感じるもの」だと気づいたんですよね。そこで「時間と共に愛着を持てるプラスチックのオブジェを作りたい」というコンセプトが固まりました。
プロジェクトを進めている時も、社内で「クロスシンク」をやっているのが、すごく役に立ったんです。
▲身の周りの愛着のある製品を共有し合いながら分類している様子。メンバー間で愛着が湧く要素を分析していった。
ふむふむ。
「答えのない問い」に向き合っている最中って不安や迷いが必ず出てくるんですけど、FICCはメンバーにも相談できる環境があるので、様々な視点でアドバイスをもらうことができるんです。その時にも「クロスシンク」の可能性を感じていましたね。
アイデアを後押ししてくれるだけじゃなく、ビジネスモデルまで本気で一緒に考えてくれる人もいたりして。そんな人たちからもパワーをいつもたくさんもらっています。
「Life Plastic」の名前の由来は何でしょうか?
訳すると「プラスチックの人生」なんですけど、日常的に使い捨てられがちなプラスチックを愛着の湧く形に落とし込むことで、「プラスチックの生涯」と「プラスチックを楽しむ暮らしのあり方」を考えるきっかけを作りたいって思いが込められています。
今後、プロジェクトがどのようになっていくのか気になります。
オブジェが出来上がってひと段落ついたので、次はおもちゃを溶かしてレコードを作ってそこに家族の思い出のエピソードを録音して楽しめる製品などを作れたらいいなあと試行錯誤中です。ゆくゆくは経年変化を楽しめるプラスチック素材を開発したいので、社会価値も創造できる形でパートナーを探しています。
「Life Plastic」を見てくれて、「こういうのもいいですよ!」って色んな人からアイディアやアドバイスを頂きつつ、コンセプトもアップデートしながら進めていくので自由にやっていこうと思います。