親は指導役ではなく、伴走者のような存在になればいい
たかまつさんは昨年から日本とイギリスの2拠点生活を始めました。イギリスに拠点を置いた理由は何だったのでしょうか?
私は長年、社会問題を自分の問題として捉え、社会参画する人材を育成する「主権者教育」に関心がありました。そんな中、ヨーロッパの子ども達の学校生活の中に、政治的なものが溢れていると知りました。
例えば、スウェーデンは若者の投票率が8割を超えています。その理由が教科書に「学校のカフェテリアが閉鎖されてしまったら、あなたはどうする?」ってテーマが用意され、「メディアに連絡すべき」や「地元の政治家に会いに行こう」などが書かれているんです。
すごい! 学校で身近な問題をどうやって社会的な議論に発展させるかを学んでいるんですね。
そうなんです。フランスでは各学級から生徒代表が選出され、学級ごとに開催される「学校管理評議会」といった組織があります。学校に関わるさまざまな事項を決める場に、校長、担任、保護者らとともに、生徒代表が参加できる仕組みがあるんですよ。このように小さい頃から大人と対等に話せる機会があることは、子どもの責任感を育むチャンスですよね。
色々とヨーロッパの主権者教育を知るうちに、「ヨーロッパで勉強して、日本の主権者教育をアップデートしたい!」と思い、イギリスにいくことを決意しました。
2022年フランス大統領選での街頭インタビューの様子
ちなみに、たしかに編集部のメンバーには、たかまつさんが「子どもが社会問題に興味を持つにためには、子ども新聞をとってみるのがオススメ」の発信に影響を受け、家庭で始めたところ、子どもとの会話内容が変化したそうです。新聞の他に、子どもが社会問題を身近に感じられるきっかけはありますか?
家族や友人とドキュメンタリーを見て、お互いに感想を言い合うのはどうでしょうか。「親は知識がないとダメだ」と思ってしまいがちなんですけど、ドキュメンタリーなら知識がなくても一緒に見れますよね。
私は子どもに対して「教えようとしないこと」が大切だと思っています。もし質問された時は「一緒に調べてみよう!」って一緒に図書館に行くのもいいですよね。親は子どもの指導役になるのではなく、サポートする「伴走者のような存在」になったらいいなと思います。
なるほど。たかまつさんは社会問題を伝えるために、学校での出張授業を行っていますが、子ども達と触れ合う時もサポートすることを努めているのでしょうか?
授業で子どもたちがいきなり宣言するのは難しいので、様々な問題に対して「署名します」「メディアに連絡します」「政治家に会いに行きます」など、事前に選択肢を用意し、丸をしていく形式にしています。答えを教えることはできなくても、サポートを通して一緒に社会を変えていけるはずです。
岩手県遠野中学校での出張授業