
空き瓶に1輪挿すだけでいい。フロリスト前田研史さんがつくりたい花が身近にある暮らし#たしかに

ここ数ヶ月で家で過ごす時間がずいぶんと増えました。せっかくならこの機会に居心地の良い空間にしようと、自宅を整えた人も多かったのではないでしょうか。
最近では掃除や部屋の模様替えに加え、部屋に花を飾る人も増えているそうです。そこで今回は、ドイツ国家認定フロリストマイスターであり東京でフロリストとして活動する「yohaku」の前田研史(まえだ・けんし)さんに、ドイツ暮らしで感じたことや花を気軽に取り入れる方法をうかがいました。
前田研史さん
鹿児島県出身。APU(立命館アジア太平洋大学)卒業後、株式会社日比谷花壇に入社。ショップやウェディングなどを経験し、2012年「ドイツ国家認定フロリストマイスター」を目指すべくドイツへ。マイスター学校を卒業し、国家試験を経てマイスターを取得し、2016年帰国。株式会社パーク・コーポレーション(青山フラワーマーケット)でドイツでの経験を活かし、2020年「yohaku」を立ち上げた。
ドイツで花のスペシャリストを目指す
——男性のフロリストって珍しいですよね。小さい頃から花が好きだったんですか?
祖父が農家をやっていて、小さいころから手を動かすことや植物が好きでしたね。愛読書は『趣味の園芸』でした。
——なかなかシブい愛読書ですね(笑)。
でも大学では日本の伝統芸能にハマり、全国各地の祭りの和太鼓や踊りを学びに行ったり、舞台で披露したりしていました。この世界で生きていこうと思ったこともありましたが、せっかくなら就職活動も経験するかと探し始めたんです。これまでやってきた和太鼓や踊りのように、自分が好きで人にも喜んでもらえるものって何かなと考えたら、「あ、花だ!」と思い出して。そこで入社したのが、全国にあるフラワーショップを手がける会社でした。
——ドイツに行こうと思ったのはなぜですか?
会社で配られたテキストにたまたま「マイスター学校の理論的な教授法」のことが書いてあったんです。
高校の時にカナダに留学した経験があり、いつか海外で働いてみたいなと思っていました。テキストを通じて、「ドイツ国家認定フロリストマイスター」という資格も知り、マイスターを目指せば自分の好きな花の仕事をもっと追求できるし、海外暮らしもできる。両方が叶えられるなと思って。
——「ドイツ国家認定フロリストマイスター」とはどんな資格なのでしょう?
国が認定したフロリストのスペシャリストで、経営や教育の権限も担う国家資格です。フロリスト以外にも製パンやビール醸造、機械工や整備士などさまざまな業種のマイスターがあります。
——なるほど、日本でいうと「職人」のようなものをイメージしていました。
もちろん、職人という意味・役割もあります。ドイツのマイスターは実務を経験しながら職業訓練校、マイスター学校を卒業し、国家試験に合格することで認定されるんですが、僕のように外国からマイスターを目指す人への情報は少なくて。人のツテをたどって少しずつ情報を集めながら、31歳の時にドイツに渡りました。現地ではマイスターのいる花屋で働きながら経験を積み、学校に通う権利を得て、33歳から2年間学生に。35歳のときに国家認定フロリストマイスターを取得しました。
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