三崎でのチャレンジを応援する拠点を作りたかった
ーーその時はまだ「朝めしあるべ」はなかったということですよね。
そうですね。ただ、三浦に関わりたい人、住みたい人、お店を出したい人が、ちゃんとチャレンジできる場所を作るための拠点は欲しいよねというのは、ずっとメンバーと話していました。
ーーなるほど。そこからあるべができるまでには、どんな背景があったのでしょうか?
三浦市はとにかく空き家が多くて、神奈川県内の市の中ではワースト1位なんです。近所にあったすごく格好いい蔵造りの建物が、壊されて、どこにでもあるような賃貸物件が建ったことがすごくショックで。トライアルステイ事業と同時に、空き家をどうにかしないとという課題感を持っていました。
ーー空き家問題はいろんな地方で課題になっていますよね。
はい。地方って空き家があったとしても、旧来の価値観とか思い込みがあって、貸すのを面倒に思う大家さんが多いんですよね。だから、空き家をこんな風に低コストで直すだけでも使ってくれる人はいるし、ニーズはあるんだよというのを地元の人に見てもらうために、この「朝めしあるべ」を作ったんです。
移住者支援の一つとして、トライアルキッチンやトライアルステイができる場所にすることは決まっていたんですけど、いきなり募集しても、すぐに集まらないだろうなと思って。とはいえ家賃はかかってしまうので、空いている朝の時間に自分で朝めしをやることにしました。
ーー「朝めし」に限定したのはなぜですか?
まずは、三崎で朝ごはんをやっているお店がなかったというのが一つですね。
学生の頃から構想を練っていたゲストハウスは、その頃にはいくつかでき始めて、泊まってくる人たちも少しずつ増えてきていたんです。そこで、わたしは滞在時間をより長くするための朝のコンテンツを作ろうと思って、朝めし屋さんに行きつきました。
ーー最高においしいあるべの朝めしですが、未来さんはどこかで料理を勉強されてたんですか?
家とか、ゲストハウスで働いていた時はスタッフ同士で作らなきゃいけないから料理自体はやっていましたけど、勉強していたわけではないです。
ーーそうなんですね……!
わたしみたいに、勉強はあんまりしてないけれど、それでもお店ができるってなれば、挑戦のハードルが下がるんですよ。
ーーたしかに、いいロールモデルになりますもんね。
そうそう。その方が説得力があるんですよね。「やってみたいけれど私もできるかな」と悩んでいる人に、「わたしができてるから平気だと思いますよ」って言えるから。いろんな意味で、自分でやるのが都合がよかったんです。料理のレベルは、トライアルキッチンの方が高いかもしれない(笑)。
ーー今トライアルキッチンで実際にチャレンジしている方も結構いらっしゃるんですか?
今は火・水のランチと金・土のディナーの時間にそれぞれ定期でトライアルしている方たちがいますね。あとは、料理教室をやりたいっていう人や、ピザ釜でピザを焼きたいという人もいるので、今はほぼ毎日入っている状態です。
ーーすごい、大人気ですね!
▲現在、金曜日と土曜日の夜にトライアルキッチンで日本酒と創作料理の「きむら」を営業する木村さん。(横須賀在住・26歳)自分のお店を持つのが夢なんだそう。→ きむらのInstagram
▲夜になると看板が「朝めし」から「トライアルキッチン」に変身。