気づいたら遥か遠くまで来ていた。
――料理を仕事にすると決めてからケータリングを始めるまでにどんな経緯があったのでしょうか?
日本に戻ってから1~2年間は、知人のバーを間借りして週に一度定食屋さんをやりつつ、フードスクールに通っていました。あとは妹と2人暮らしをしていたので、家にたくさん友人を呼んで料理を食べてもらっていましたね。
その時に来ていた子に、「そんなに料理が好きなら、ケータリングバトルのイベントがあるから出てみたら?」と言われたのが、実はケータリングを始めたきっかけなんです。
――ケータリングバトルというのは……?
イベント管理アプリを運営している株式会社Peatix JAPANさんの大きなイベントの開催が決まっていて、その宣伝の一環としてケータリング担当者を決めるコンテスト型のプレイベントがあったんです。その「ケータリングバトル」に友人と2人でユニットを組んで出場した結果、優勝することができました。
――すごい……! いざ優勝した時はどんな気持ちでしたか?
やりたいことで評価してもらえたから、すごくうれしかったですね。正直、ケータリングを仕事にしようとは思っていなかったんですけど、その時に参加していた方がわたしたちの料理をブログにあげてくださったり、Peatixさんが大きく取り上げてくださったりしたのをきっかけに、どんどん注文が来たんです。
それからとにかく注文を受けて作る日々が始まって、「FOOD unit GOCHISO」としてしばらく2人で活動していました。それがどんどん広がっていって、2018年に新しいメンバーと一緒にPerch.を立ち上げて、今に至ります(笑)。
――ものすごい急展開ですね(笑)。料理のお仕事を本格的に始めて8年以上になると思いますが、あっという間でしたか?
長かったです~~(笑)。本当に、濃い日々を過ごしていますね。最初に知人のレストランを間借りしていた時も含めると、Parch.のアトリエはこの笹塚で4軒目です。
もともとケータリングのためだけのアトリエとして使う予定だったから、今客席や物販があるのが不思議です(笑)。
――その中で何か印象的だった出来事はありますか?
いろんなことがありましたけど、やはり昨年、新型コロナウイルス感染症の影響で心から愛していたケータリングの仕事がなくなってしまったことですね。すごく辛かったしショックだったけれど、そのぶん、一度立ち止まって考えた時にいろんなことが見えてきたんです。
今まで、常にものすごい速度で物事が展開していくから、じんわり一つ一つのことを振り返ったり「どうしたいか」を考えたりする余裕すらなかったんですよね。
――本当に怒涛の日々だったんですね。どんな気づきがあったのでしょうか?
わたしが愛しているのは「料理」で、それを通して表現できていることが自分にとって幸せなことなんだなと。もっと言えば、ひとりではだめで、みんなとやることが大切だと確認できたんです。
――今、仲間と一緒にPerch.で働く理由が見えてきたと。
そうですね。実は今Perch.で一緒にやっているメンバーの多くは、わたしが大学生の頃に出会っているんですよ。アルバイト先が一緒だったり、行きつけの飲み屋さんが同じだったり(笑)。
もちろんみんなもともと料理が好きな人たちなんですけど、「何ができるか」よりも、人間性を尊重できて「一緒に仕事したい」「一緒にいたい」と思える仲間たちと働くことが、わたしにとってすごく大事なことなんだなと、改めて気づかされましたね。