人生を豊かにしてくれたリベラルアーツとの出会い
はじめに、FICCはどんな会社なのか教えていただけますか?
FICCは2004年よりファッションブランドやホテルなどのクリエイティブ業務を中心に制作会社として創業し、現在は幅広い領域でマーケティングとブランディング支援を行っています。
約50名のメンバーの中で最も大切にしていることは、「興味深いテーマや視点はすべて自分の学びになり、そこを追求していけばいくほど社会や未来に繋がっていく」と言うことです。メンバーの興味を消さないことを大切にした環境づくりをしています。
「興味を消さないこと」ですか!まるで学校の環境みたいですね。
そうですね。この考えには私が学生時代に魅せられた「リベラルアーツ」の考えがあるんですよ。
リベラルアーツってどんな学問なんでしょうか?
リベラルアーツは、「人を自由にする学問」と呼ばれていて、起源は古代ギリシャ・ローマ時代に奴隷として囚われていた人が市民として解放される時に、人として自由に生きていくための知識や力を身につけるために生まれた学問です。
17世紀にイギリスからアメリカに移住した開拓者たちによって、リベラルアーツは大陸を渡ります。私は高校と大学時代に海外のリベラルアーツの環境にいたことで、自分の人生観が変わりました。
森さんがリベラルアーツと出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
私は中学受験を経験しているのですが、あまり記憶力が良い方ではなく、「なんでこれを覚えたりするんだろう?」って、ただ暗記しなければならない勉強に対して意義が見いだせず、苦労していたタイプでした。
なので記憶重視の日本の教育があまり合わなくて。そんな中、高校時代にオーストラリア留学した時に体験した授業では「正解のない問い」に向き合ったんです。
どんな授業だったんですか?
マリンスタディーズという海洋学の授業では、毎日ビーチに行って傾斜を測るんです。「風の向きや波の動きのデータを使って」という定義もなく、ただ「自由に論文を書いてください」というものでした。そして、自由にアプローチして良い中で、私は毎日の風向きのデータと掛け合わせて論文を書きました。
誰も答えを持っていない中で、クラスメイトのアウトプットの方法はそれぞれ違っていて、「私ってこんな視点で世界を見るのが楽しいんだなあ」って自分自身を知るプロセスにもなるのもすごく楽しくて。
その後、大学もリベラルアーツの環境に入ったんですよね。
はい。大学はアメリカに進学して、リベラルアーツ教育で有名なアメリカ最古の女子大に入学しました。学部への入学という概念はなく、そこでは自分で何を学び、どのように研究するかも自分で考えないといけないんです。
私は主専攻にアート、副専攻に数学を選択したんですけど、「この2つのコンビネーションも何?」って感じですよね(笑)
ちょっと分からないですね(笑)
日本の教育だと、「数学はこれ、心理学はこれ」って線引きされがちなんですけど、リベラルアーツの環境では自分の興味を優先にして学ぶことができるので、学問の枠に囚われず、自由に勉強していいんです。
正解を導き出すことより「問いに向き合い、自分の考えを相手に伝えられる力」が重要視されていることが、本当に素晴らしいなと思ったんですよね。別の分野を専攻している友人と対話していると、分野の枠を超えて重なるテーマに出会ったり、対話を通じてその世界がまた豊かになっていくんですよ。
リベラルアーツと出会うことで、「自分の世界に出会う方法」を学びました。
ご自身の中で何が見えてきたのですか?
ちょっと変な話になっちゃうんですけど、高校生の時に午後6時15分のグラウンドで一瞬だけ現れる、きらきらと輝く景色が好きだったんです。その景色を思い出すのには特に理由がないんですけど、リベラルアーツを想う時に、ふと思春期の時に好きだったその情景を思い出したり、オーストラリアで見た言葉が出ないほどの星空を思い出したりするんです。
ただ学術的な知識を得るだけではなく、「人生の中で紡がれてきた感性を常に知り続けていくことができる」。それがリベラルアーツを通じて、自分の世界に出会うことなのだと思います。