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正解のない問いの考え方に悩む人必見!
コツは「好奇心の旅に出ること」

日常生活の中で「ときめく感覚」を身につける

たしかに編集部経営者になった森さんが、「リベラルアーツ」を社内で取り組もうと思った理由が気になります。

森啓子さん私はFICCに2005年にデザイナーで入社し、その後、ブランドのデジタルマーケティングの領域でキャリアを歩んできましたが、私が取締役になったタイミングで、経営者として一個人としてどんな思いでFICCに向き合っていくべきなのかを手探りしていました。

ちょうどその時に、母校から「講演をしてほしい」といった依頼が重なったんです。「次の世代に何を伝えていけるのだろう?」と人生を振り返っていると、自分の人生という時間軸を超えて過去から未来へと繋がるリベラルアーツの歴史に、自分の人生の意義を感じたんです。

森啓子さん

たしかに編集部リベラルアーツの環境で学んでから何十年過ぎても、思い出す存在だったんですね。

森啓子さん自分が組織の中で大きな役割になった時、会社の経営と自分の人生を重ねなければ、「なぜやるのかをきちんと理解しないと貢献できないのではないか」と思い、会社と向き合う理由が必要でした。

そして自分が取締役になったタイミングで、自分が経験したリベラルアーツの素晴らしさとその想いを、FICCというブランドが存在する理由にも重ね、メンバー全員にスピーチをしたんです。

たしかに編集部周りの反響はいかがでしたか?

森啓子さん想いは届いたと思います。でも、最初はみんな「リベラルアーツって何?」って感じで手探りでした。そんな中で嬉しかったのは、リベラルアーツを実感しようと、メンバーが主体的にイベントを企画してくれたことです。

そして、私が代表になったタイミングで、毎月正解のない問いに全社で向き合い対話する「クロスシンク」という場をスタートしました。これはメンバーが過去に企画してくれたイベントの名前からとったものなんです。

たしかに編集部「クロスシンク」では具体的にどのようなことをするのですか?

森啓子さん日本の学校では「問題を出されること」はあっても、自分で「問いを立てる」ことはあまりないですよね。クロスシンクはメンバーひとりひとりの興味を起点に、答えの無い問いに向き合い、そこから見えてきたものを持ち寄り対話することで、また新たな問いを共創する取り組みです。

イノベーションの種が生まれる場として大切にしています。

たしかに編集部面白そう!だけど一方で、身近なところにある問題を自分ごととして捉えられるのって難しそうです……。

森啓子さんそうですね。正解のない問いを考えるのって難しいことでもあるんですけど、「社会の当たり前ではない、新しい表現を導き出すことができるはず」だと信じる気持ちが大切です。

クロスシンクの時に「好奇心の旅に出よう!」って言うんですけど、頭で考えないで、心が動くままに情報に触れたり、人と対話する中で感じる違和感を大切に、「それってどういうことだろう?」って考える。どんな状態でもいいので、それを対話のテーブルに上げていくんです。

たしかに編集部正解のない自分が感じる世界を人に話す時、自分の「納得感」を共有する上手な方法はあるのでしょうか?

森啓子さんある日、リベラルアーツの話をもっと浸透させるため、お片づけの「こんまりさん」が使っているのをお借りして、「SPARK JOY(ときめき)」って言葉に変えて全社に伝えてみたら、その日からみんながその言葉を使うようになったんですよ。

森啓子さん

たしかに編集部「ときめき」。たしかに分かりやすいです!

森啓子さんこんまりさんがお片づけをする視点も「ときめくか、ときめかないかの感覚」ですよね。ここでは自ら問いを立て世界を見つめることがリベラルアーツなので、自分が日常生活の中で、「何にときめくのかに気づく感覚」が重要になってきます。

自分の正解を納得してもらうためにも、「人に伝えて、人から視点をもらう作業」を行い、答えをもっとシャープにしていくことは必要不可欠ですね。

たしかに編集部ちなみに、社内ではどんな「スパークジョイ」が出ているんですか?

森啓子さん教育の事業立ち上げに関わっているメンバーのひとりは、子どもの父親でもあるので「将来この子はどんな社会を歩んでいくのか?」って子どもたちが待ち受ける未来について興味があるんです。

その思いを自分の中だけで留めず、社内に子どもがいる人たちに「子どものためにどんな社会を作っていきたい?」ってテーマで話し合ったりしています。

たしかに編集部そんな深い話、普段のビジネスの場だったら出てこないですよね!

森啓子さんはい。だけど、「そこまで話していいんだ」って自分の思いが価値になる組織であれば、話した方がいいって思うことができますよね。これは社外の人と話す時も同じ気持ちで、「話した方が可能性が広がる」と出会う人すべてにそんな風に思って欲しいです。

たしかに編集部話やすい環境の中でも、ミーティング中に意見があっても「これ言ってもいいのかな?」って思ったりすることが最近多いのですが……。

森啓子さんその考えってすごく今の日本の社会に蔓延していていますよね。アメリカなどでは自分の意見を言わないと生きていけない世界なので、ちゃんと発言しないと次の会議に呼ばれなくなっちゃうんですよ。

「間違ったことを言ったらダメだ」って思ってしまっていたら、例えば誰かに「何でもやっていいよ」って言われたとしても何も変わらない現状です。そんな中でも自分が出した意見が人のためになって、「ありがとう」と言われた実体験を作ると、「これで大丈夫なんだ!」って思えるようになるはずです。

たしかに編集部なるほど!

森啓子さん社内でも「ロジックをうまく言葉にできない」や「スパークジョイが分からない」など、人それぞれで苦手分野があるんですけど、出来る限りチーム同士でアドバイスしています。

もう2年くらい、月に一度の「クロスシンク」の場を続けているのですが、今では社内でのクロスシンクにとどまらず、社外の人たちとのビジネスの場でもクロスシンクをやり始めていて、実際に「クロスシンク」からは、社会的意義を持った共創プロジェクトや協業サービスも生まれています。

クロスシンクから生まれたプロダクト「plastone」

▲クロスシンクから生まれたプロダクト「plastone」は、おもちゃのプラスチックをリサイクルしてできたオブジェ。詳しくは【後半の記事】で紹介します!

たしかに編集部それはすごいです!皆さん、回数を重ねるごとに得意になってきているんですね。

森啓子さん社内だけではなく社外でも探求できる場を持つことで、自分の好奇心が何か、他人の興味を知ることができる。これってまさにリベラルアーツが教えてくれる、本当の「学び」だと感じます。

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