読み終わった者同士、話し合いができる内容に惹かれた
絵本「ふたりももたろう」がオペラ作品となることに、とても驚きました。この企画はどのようにして始まったのでしょうか?
もともと演出家の村松さんとは仕事仲間で、前から「子ども達が楽しめるオペラを作りたい」と話していたんです。現在発表されている子ども向けのオペラって同じ演目が繰り返されていることが多いんですよ。
そんな中、大人と子どもの両方が気軽に見られる作品を探している時に偶然TBSの夜のニュース番組「news23」で『ふたりのももたろう』が紹介されていて、すぐにAmazonでポチって、次の日夢中で読んでみると「この物語をやりたい!」と思い、制作を決めました。
プロデューサーの笈沼甲子さん
おふたりは「ふたりももたろう」を読んでみて、どのような印象を持たれたのでしょうか?
「今の時代のキャラクターは誰かにやっつけられて、終わりじゃないんだな」と思い、読み終わった者同士で話し合いができるストーリーがいいなって。
他にも、日本全国誰もが知っている桃太郎の話が共感力を育む物語にもなっていて、それが押し付けがましくないのがなおさらいいなと思いました。
私は平面である絵本が立体になることの面白さを感じました。ひとりで本を読むのと、大勢の人と舞台を見るのとでは体感時間が違ってきますよね。
舞台を通して、自分が主人公になった気持ちでストーリーに没入しながら、見終わった後に「多様性とはどういうものなのか?」について考えるきっかけに挑戦してみたいと思いました。
演出家の村松裕子さん
今回はミュージカルではなく、「キッズオペラ」ですよね。ミュージカルとオペラの違いってどこでしょう?
発声法です。オペラでは歌唱が最も重要視されるため、マイクを使用していないのですが、ミュージカルの人はこめかみやあごに小さなマイクを仕込んでいるんです。
「ふたりももたろう」は、全てマイクを使用せず生の声で、ホール自体もそれほど大きくないんですけど、マイクなしで「人間の声ってこんなに聞こえるんだ!」という体験をしていただきたいです。