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「社会の多様性よりも、ひとりの人間の多様性から」 ヴィヴィアン佐藤さんに聞く、誰も置き去りにしない社会で大切なこと

「非建築家」という職業を名乗り始めた理由

たしかに編集部ヴィヴィアンさんは、ドラァグクイーン、映画評論家、美術学校の先生など様々なジャンルのお仕事をされていますよね。表現する側と批評側、どちらの仕事も行う理由は何でしょうか?

ヴィヴィアン佐藤さん作品を作る側と観る側は正反対ではないからです。例えばアーティストは作品を作る際に「どうして今、これを発表するのか?」ということを考えて、批評的な態度をも持ち合わせなくてなりません。一方、映画批評の仕事でも、監督の意図をくみ取ることだけが仕事ではなくて、作り手にはない見方を自分の言葉で語ることも大切なんです。

そうすると、実は作る側も観る側も物事を「客観的に見る姿勢」が必要です。だから私の場合、どの仕事も本業や副業といったくくりはなくて、もう全てつながっているって感じですね。

たしかに編集部プロフィールに書かれている「非建築家」とは一体どんなお仕事なのか気になります。

ヴィヴィアン佐藤さん非建築家と言うと、よく「建築を壊す人ですか?」と勘違いされるんですけどそうではなくて(笑)。私は建物と建築は別のものだと思っています。建築は考え方の部分で、建物は人が住んだり、物を入れたりするビルディングだと認識しています。

例えば建築を作る際、図面や模型を作って、それを元に建物が完成しますよね。だけど、それってただ図面や模型をコピーしただけで「オリジナルの建物って一体どこにあるの?」と思い始めたんです。

そこで「建物とは哲学的な考え方のことである」を根本に、いわゆる鉄やコンクリート、ガラスで作られるものではない建物を表現しようという取り組みが「非建築」。そのため表現方法は文章でも絵画でも何でもいいんですよ。そんな風に建築に対する考えを柔軟にしてほしいと思い、非建築家という仕事を名乗り始めました。

非建築をテーマにしたアート作品(作・ヴィヴィアン佐藤)

たしかに編集部「非建築」とは多角的に物事を見る活動なんですね!

ヴィヴィアン佐藤さんそうですね。私は大学客員教授も務めているんですけど、授業では生徒達に「人や街、ニュースなど全てのものは多面体である」という視点を教えています。

例えば、生徒には何度も見た好きな映画でも、監督が作った前の作品や出演している女優さんの生い立ちなど、一見映画に関係なさそうな文脈を見つけて作品を解読してもらう。そうすることで広い視野を持つことができて、人とは違った視点で考えることが出来るんです。

たしかに編集部Z世代と呼ばれている学生たちと交流してみて、何か感じたことはありますか?

ヴィヴィアン佐藤さん他の世代と比べてみると、世間一般には従来の価値観の違いにマイナスのイメージを持っていたり、マーケットの分野では消費対象として重要視しすぎる傾向がありますね。また、彼らは慎重にお金を使う傾向もあります。

だけど、どの世代にも固有の価値観があります。私は「世代による優劣!」ではなく、何に好奇心があるのか、そこに興味を持つんですよね。なので、Z世代と言われている生徒たちだからと言って特別視はしていませんし、「ひとりの人間として」全員と向き合っています。

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