変えられないことを、変えていくために、TikTokをはじめた
「純悪」のおふたりが出会ったきっかけから、まずは教えてください。
阿部ちゃんとは僕が20歳、彼が24歳の時に『WATER BOYS2』(2004年)で初共演して、それからオーディションで会ったり、一緒に飲んだりする仲でした。それで僕が「飲み会に使う時間を有意義に使いたいな〜」と思い、阿部ちゃんを誘って、2019年に「純悪」の活動をスタートさせたんです。
阿部さんは山根さんに誘われて、どうでしたか?
すぐに「いいよ!」って返事しました。役者の仕事って待つことが一般的なんですけど、「自分から仕事の幅を増やせるかもしれない」と思って。特にSNSにも抵抗がなかったので、割とすんなり受け入れられました。
最初はYouTubeで撮影・編集をはじめて、TikTokが流行りはじめたこともあり、TikTokで投稿してみることに。結果として、若者をはじめ幅広い世代から反響があって驚きました。そこから縦型ショートドラマを研究していきましたね。
「純悪」ではドラマや映画で悪役を演じることが多いおふたりからは想像できないような、明るい姿・笑顔を見せているのが印象的です。
和馬が「純悪」をやろうと言ってくれた時から、自分達がやってきた経験を活かしてコンテンツを生み出すことを意識し続けています。2人とも普段からヤクザやチンピラ役が多かったので、この風貌を活かすことは決めていたんです。その一方で、TikTokでは悪役では見せられない「素の自分」を見せられたら良いなと思い、動画を作っていきました。
たくさん動画コンテンツを作られている中で、今まで一番印象に残っている動画はありますか?
うーん、色々あるからなあ…その中でも大きな反響があったのは、「ヘルプマーク」の動画や父の日企画で「世界一平和な喧嘩をしよう」ですね。ヘルプマークは、末期ガンと戦うYouTuberの「おぐりんさん」という方が、外見からは分からない援助や配慮を必要としていることを周囲に知らせる「ヘルプマーク」の普及活動をやっていて、純悪とコラボして撮ったものです。
一方、反応が少ない動画の中にも「もっと響いてほしいな〜」と思う作品はいっぱいあって(笑)。自分たちの中で印象には残っているけど、再生回数でいうとそんなに、という動画もたくさんあります。
そうした動画は振り返ると、本当の意味での「オリジナル」を突き詰めていった動画なんですよね。オリジナルとはつまり、どこにもないもの、「自分」しか共感できないものだったりする。だけど、それだとTikTokやYouTubeではなかなか拡散されにくい。
だから、動画作品を作る上では、オリジナリティと観る人の共感ポイントのバランスをかなり意識してつくっています。あと、見た人が嫌な思いをしないようにも注意していますね。
「純悪」やTikTokを始めてみて、ご自身の中で変化したことはありますか?
自分はあまりないかな(笑)。もともと、ダンス→俳優→DA PUMP→俳優…とその時々の自分のやりたいことややるべきことに合わせて、自ら動いて環境を変化させることをやってきた人間なので。
「自分で仕事を取りに行くよりも、来た仕事を引き受ける」という俳優の仕事スタイルに対しては、ある程度、しょうがないと思っていたんですよ。変わらない慣習とか色々変えられないこともあるよな、と。
でも、その状況を変えたい、という気持ちが強くあって「純悪」をスタートして、SNSでの発信を初めてみた結果、俳優の仕事が増えることにつながった。今おかれている環境にどこか息苦しさを感じていても、自分から動くことで現状を変えられることを証明できたのは良かったですね。