SNSでずっと「つながっている」生きづらさ
今の若い人たちは、仕事・プライベート問わずSNSであらゆる発信をして生きています。現代における若い人の悩みや生きづらさについて、感じることはありますか?
SNSを通じて常に人とつながっているはずなのに、不思議なことに「友達にも悩みを打ち明けられない」という子を見かけるようになりました。10代〜20代の子たちはSNSを使うことが当たり前な時代に生まれ育っているので、本当の意味で一人になれる時間、自分と向き合う時間は、ほとんどないのかもしれないなと思うんです。
ある意味ずっとオンライン状態のような?
おっしゃる通りですね。なのでSNSがない時代に育った私たちの世代よりも他人から見られている感覚が強く、若いときに自由にできる範囲も狭まっている。つながりが心強いだけでなく、負担になっている部分もあると思いますね。
たしかに。アカウントを使い分けたり、映える写真や自分のキラキラした面を切り取って発信していると、「悩みや葛藤も抱えている、ありのままの自分」を友達に見せづらくなっていくのかもしれないですね。
あとは「簡単に他人の生活や言動が見えてしまう」ことにも戸惑いがあると思うんですよ。「◯◯ちゃん、転職したんだって」「◯◯くん、結婚したらしいよ」といった近況は、本人に会っていなくてもSNSの投稿から知ることができる。タイムラインで起きている炎上や誹謗中傷が目に飛び込んでくる。そうやって意図せず情報に触れてしまう機会が増えましたよね。
知らなくても良かった事実をSNSを通じて知ってしまったり。それによって苦しい思いをすることもありますね。
もちろん良い面もあって。性的マイノリティや障がいを持っている人、貧困で生活が苦しい人の声など、自分とは異なる立場にある人たちの状況をキャッチしやすくなりました。知るきっかけを得られ、社会が変わっていくムーブメントも起こっています。
でもそれは同時に、人の悲しみや痛み、残酷な現実も見えやすくなったということ。有無を言わせず膨大な情報が流れて来たときに「それら全てを受け止めよう」と、思い詰めすぎると自分の心が持たなくなってしまいますね。
たしかに、そうですね。
私自身、呆然とタイムラインを眺めながら「自分に何ができるんだろう」と、ただただ無力感ばかりが募っていく……という経験をしたことが何度もあります。やはりSNSを通じて、他人の情報を「見る」だけでも負担をかけていると思いますね。