「感性アナライザ」が可能にする、リアルタイムの感情測定
満倉教授が開発した感性アナライザとは、どのような装置なのでしょうか?
世界初となる、脳波によるリアルタイム感情認識ツールです。脳波の計測器を装着するだけで、「興味度」「好き度」「集中度」「ストレス度」「沈静度」という感性を、グラフが表示される形で見える化できます。データのベースになっているのは、脳波とホルモンの相関性です。同様の研究は世界中で行われていますが、感性アナライザにおける最大の特長は、リアルタイムで計測ができること。これにより、感情が動いた要因は何かを、正しく把握できます。
かなりシンプルな装置ですね。なぜ人間の複雑な感情を計測できるのでしょうか?
私は長い年月をかけて人間の脳波を研究してきました。例えば、箸で小豆を皿から皿に移動させ、被験者にストレスをかける実験が有名ですが、この際にコルチゾールやドーパミン、オキシトシン、セロトニンなどの変化を計測します。こうしたデータを集積し、数理モデル化することで、一定の脳波の変化を「ストレス度」として捉えることが可能になります。さまざまな脳波とホルモンを関連づけることに約17年の歳月をかけ、感性アナライザのパラメータを構築してきました。
感性アナライザは、実生活のどのようなシーンで役立てられるのでしょうか?
自分の生活習慣の中で、何が感情変化の要因になっているかを発見し、改善することができます。例えばストレス要因を発見できれば、その習慣を避けることで、メンタルを健全化できます。うつ傾向にある人の気分をリセットさせる、何かに集中する環境をつくりだす、お気に入りの商品や場所を見つけるなど、活用方法は無限大です。
いろいろなシーンで活用できることが想像できますね。これまでの活用事例を教えてください。
現在、さまざまな企業とのコラボレーションを進めているところです。生活者の感情を測定できれば、正しい効果測定を通じて、広告やマーケティング、商品開発などの品質を高められるため、広告会社や各種メーカーに導入していただいています。集中力を高める空間、リラックスできる空間づくりなど、建築を通じて教育やビジネスに役立てる事業も進んでいます。私の研究室でも試しに使っていますが、自分の授業に関心が薄い学生がいるなど、耳が痛い部分も可視化されて面白かったです(笑)。
今後、感性アナライザはどのように進化するのでしょうか。
現状の感性アナライザはヘッドセットが大きいので、まだまだ実用的ではありません。そのため、デバイスの小型化を進めており、間もなく小型デバイスで計測が可能になります。また、感情を計測するだけなく、感情そのものを変化させることができる、電気信号を入れて気持ちを変える装置も開発しています。実現すれば、例えば緊張状態にあるときにリラックスの信号を入れて緊張を緩和させるなど、特定の感情にアプローチすることが可能になるでしょう。