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化粧品メーカーと考えるルッキズムの問題 ポーラ幸せ研究所が追求する、“幸福な美”のあるべき姿

SNSにより蔓延するルッキズムと、どう向き合うべきか

たしかに編集部SNSをはじめとしたテクノロジーの発達により、容姿を他者に公開する機会が増えました。同時に、外見的な美醜を重視して人を評価する「ルッキズム」も目立ち、差別にもつながっています。

武智さん私にとってルッキズムは、完全な差別であり、誰も幸せにしていない現象です。根底にあるのは他人と比べてしまう心理ではないでしょうか。一部には外見により優越感を得る人もいますが、優越感=幸せではありません。そして容姿に悩みを持っている方も、ルッキズムの渦中に入ってしまうと、「自分に足りない」「劣っている」部分ばかりに焦点を絞ってしまいます。幸せも不幸せも伝播しやすい社会なので、外見だけで評価をしない考えが広まってほしいです。

たしかに編集部ポーラ幸せ研究所の前野隆司先生には、「#たしかに」の本シリーズでも取材しました。「幸せの4つの因子」の中で、「『ありのままに』因子」を一つにあげていましたが、ルッキズムにはそこが欠けているのでしょうか。

武智さん好きなことや得意なこと、本当の自分らしさを追求するのが「ありのままに」因子です。他人と比べてしまうのは、その因子が弱っている状態なのでしょう。たしかにSNSで毎日のように他人の写真を見ていると、比べないことのほうが難しいのもわかります。自分が弱っている時、自信がない時はインターネットを一時的に見ないようにするような工夫も必要なのかもしれません。

たしかに編集部SNSに加え、「細い方がいい」「若い方がいい」「肌は白い方がいい」など、日本には外見における圧力が根深く存在するのも感じます。

武智さん韓国やアメリカにおいても、ルッキズムは深刻です。一方、半年前にフィンランドを旅したのですが、現地在住の多くの人が「人と比べないところが魅力」と言っていました。世界幸福度ランキングで6年連続1位のフィンランドでは、他人と比べないこと、そして何をしたら自分が幸せであるか考えることを、幼い頃から教え込まれるそうです。社会的な意識づくりも重要なのでしょう。

たしかに編集部最後に素朴な質問なのですが、化粧品メーカーをはじめ美容業界にとって、外見に優越感や劣等感を抱く人がユーザーの一部であることも事実です。ルッキズムにおける社会的な意識づくりにおいて、どのような役割を果たすべきだとお考えですか。

武智さん当社だけでなく、美容業界のほとんどのメーカーは、競い合ったり、見せびらかしたりするために商品を提供しているわけではありません。ユーザーさんが楽しんだり、幸せになったりするのを目指しているのは、世界中のメーカーに共通していると思います。しかし残念ながら、業界内のごく一部には、過剰な広告によって消費者のコンプレックスを刺激し、利益を追求しようとするビジネスが存在してしまう。生活者の皆さまには、目先の情報に惑わされず、各企業の理念やブランドの姿勢を見てほしいです。

武智さん近年はブランドの理念などを踏まえた消費行動も浸透してきているので、ポジティブな未来も感じます。業界や社会のレベルで明確な答えを出すのは難しいですが、少なくとも私自身は、研究所の活動を通じて美や幸せに対する理解を深め、世に共有していきたい。そうすれば少しずつ、ルッキズムの課題も解消できると信じています。

編集部のここが「#たしかに」

美容とルッキズム、社会貢献と事業活動など、難しい命題に正面から受け応えをしてくれた武智さん。その姿勢には、凛とした美しさを感じました。ポーラ幸せ研究所の根底には、長い歴史の中で培われたブランド哲学があり、さらに新たな発見を求めて活動を進めているからこそ、自信を持ってインタビューに臨んでくれたのでしょう。

キーワードはやはり、他人と比べないこと。美しさに限らずさまざまな領域でも、そのマインドは条件になるのだと感じます。テクノロジーの発達により、自分の芯を揺るがす情報も数多く流れてきますが、ぶれずに楽しみながら、日々のルーティンを続けたいですね。

取材・執筆:相澤優太 撮影:布川航太 編集:#たしかに編集部

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