多様性が、持続可能な世の中をつくる。
——ところで今回、取引農家さんにコロナの影響はありましたか?
いろんな農家さんと取り引きしているので、一概にはいえませんが、大きな影響を受けた方は少ないです。1点集中で西洋野菜を栽培していた方やスケールメリットを重視した営農スタイルの方はなかなか大変でしたけど。例えば4〜5月をピークにレタスを集中的に栽培していた農家さんは、めっちゃしんどそうでした。ある程度分散した顧客を持っていたほうがいざという時にタフだというのは、経営の一般論かと思います。実はこれは、持続可能な農業を考える上でも同じことが言えます。品目を絞りすぎると畑の生態系が脆弱になるんです。病気や虫の害が深刻化しやすく、全滅のリスクがあがります。一方で、あれこれ多品目でやりすぎても手間が大きくなっちゃう。だから僕らは、「ある程度分散させて作物を育てましょう」と推奨しています。それは平和な時は非効率なんですけど。
——世の中、なんでも効率化っていいますよね…。
効率を追求するために多様性を排除してきたというのが、世の流れかと思います。農産物流通もそうです。だけど、それによって窮屈さを感じたり、いざという時のタフさが失われているように思います。
——多様性を排除した結果、脆弱になる…。怖いですね。
これ、人にも言えますよね。今コミュニケーション偏重の時代じゃないですか。コミュ力が低いとそれだけで人間性丸ごと否定されるみたいな(笑)。でもウチはいろんな人が働いていて、言っていることはわかりにくいんだけど玉ねぎの袋詰めがめちゃめちゃ早い人とか、驚くほど根気強い人とか。いろんな人がわちゃわちゃいることが持続可能という感覚で、それは多分畑を見ているからだと思うんだけど。バックグラウンドが多様だからミスコミュニケーションが起きて当たり前、分かり合えなくて当たり前。だからやり取りは丁寧になるし、分かり合おうというプレッシャーがなくなって、それが生きやすさにつながってる部分もあるんですよね。逆に、似たような価値観の人ばかり集めた企業が、組織の安定化に苦労しているという話も聞きますし。
——大切なのはスムーズなコミュニケーションではなく、“丁寧に”ってことなんですね。
さっき、野菜のブレの話をしましたが、野菜のブレへの許容って、人間の多様性の許容にもつながるんじゃないかなぁと思っています。人のブレを許容するのってなかなか難しいから、まずは野菜のブレで練習してもらえれば(笑)。
——たしかに。まずは野菜のブレを許せる人をめざします(笑)。