「片手間ではできない」と、店を継ぐ決意。
――そもそも小島さんは、お店を継ぐ予定だったのでしょうか?
いや、全く考えていませんでした。大学を卒業して好きな仕事をと思い就職しました。ゲームメーカーで8年、営業やマーケティングの仕事に携わりました。
――そうなんですね。ではなぜ3代目に?
最初はサラリーマンをしながら、「ECをやりたい」という社長(親父)の相談にのっていたんです。15年くらい前、ちょうどネット販売が始まった頃です。当時はどこもそんなに力を入れてなくて、今から思えば雑なサイトが多かったですね(笑)。
――ネット全盛期の今じゃ考えられませんね。
例えば商品も写真が載っていればいい方で、あとは「アーモンド1,000円」くらいの情報のみ(笑)。でも販売ってそういうことじゃないですよね。マーケティングの部署でカタログを作った経験から、ECはもっと丁寧にやればチャンスがあると感じたんです。
――なるほど。本格的に取り組もうと思ったんですね。
片手間ではできないと思い、サラリーマンを辞めました。
――アメ横の街がどんどん変わって、肩を並べていた小売店がなくなっていく中、お店を継ぐことに迷いはなかったんですか?
それはありました。ただアメ横って知名度はありますし人は来るので、ちゃんとお店に立って真面目に商売をやれば、自分とスタッフが食べていく位はなんとかなるだろうと。加えてECサイトを育てていく。当時はまだちゃんとできているところもなかったので、専門店だからこそやるべきだと思いました。
――サラリーマン時代は、ECサイトの運営などに携わっていたんですか?
いや、完全に独学でした。商品訴求はカタログ作りで学んだ「伝えていくこと」を意識して少しずつ整えました。
――サイト作りが独学とは驚きました。HPからは商品へのこだわりを感じます。仕入れのために海外視察もされているとか?
昨年はコロナの影響で海外視察は叶いませんでしたが、これまで7カ国ほど行きました。店ではドライフルーツも扱っているので主にフルーツの農園へ。行くと必ず農家さんに驚かれるんです。小売業者がわざわざ農園に来ることなんてほとんどないみたいで。デーツを視察した時も「小売業者なのか?」って笑われました(笑)。
――商社のような大企業ならまだしも、同業他社がしない視察をあえてするのはなぜでしょう?
商品規格書には書いていない、美味しさの理由を探したいのです。アメリカなどは顕著なのですが、環境や作り方よりも「●●に認められた」「●●を取得しています」といった、規格化された部分を評価する傾向が強いんです。例えば土壌が良いとか、水がいいといった付加価値に農家さん自体気づいてないことも多く、それを知りたいのです。
▲カリフォルニアでデーツ畑(ナツメヤシの実)を視察。現地へ足を運び納得できるものを確かめたいと小島さん
デーツ買付紀行 小島屋が行く デーツ畑視察ツアー → https://www.kojima-ya.com/f/trip_e001
――その情熱は、どこからくるんでしょうか?
差別化ですね。専門店として、他よりもいいものをという思いがあります。あとはストーリーです。美味しい理由をちゃんと言葉にして、お客さんに届けたいのです。
――ライターの取材と似ているかもしれません。伝えるべき何かを探る。それにはやっぱり直接見たり聞いたりするのが早いし近づけますよね。
ネットって競争が目の前にあるんですね。「ナッツ」って検索したら似たようなお店がずらり出てくる。その中でどう商品を伝えていくか。そう考えると今はお店の方が売り方は雑ですよね。商品の説明もないし、POPすら書いてない(笑)。
――ネットとリアルの売り方が逆転したというのは面白いですね。コロナ禍では特に、その動きは加速したんじゃないでしょうか?
今は落ち着きましたが、一時期ネット販売は増えました。面白かったのが、検索して自社サイトに買いに来てくれる方が増えたこと。以前だったらネットモールや大手ECサイトへの出店が鉄則でしたが、自社サイトも新規獲得のチャネルとして成立するようになったんです。
――強みがあるからこそ、生まれた導線かもしれませんね。