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竣工から50年、今もなお人を惹きつける中銀カプセルタワービルの魅力

心地よい暮らしが自然と生まれる場所

ーーたしかに、住人の方はカプセルでの暮らしをSNSに上げたり、楽しそうに住む様子が伝わってきますね。

ここはキッチンや洗濯機置き場がなく、お風呂はあるけどお湯が出ない。都心のマンションだった普通住まないですよね。それを選ぶってことは、変わっているというか(笑)。だからか、住人がすごく個性的なんです。

交流も盛んで、定期的にカプセルのメンバーで、通称「カプ飲み」っていう飲み会することも。他にもグループラインで「一緒に銭湯に行こう」や「おいしい物もらったんで、部屋に集まって食べませんか?」って呼びかけがあったりします。

マンションの住民同士で交流

ーーマンションの住民同士でそこまで交流するのは珍しいですね!

ここは「現代の長屋」ですね。ちゃんと個人のスペースありながらも、らせん階段で隣近所とつながっている。心地良い暮らしやすさが自然と生まれて、そんな中にいると、このビルをもっと長く残したいなと感じ始めました。

ーーそれで前田さんは「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」を始めたのですか?

はい。理由はもうひとつ、2007年に建壊しが決まった時、メディアでも大体的に流れたんですよね。ですが、リーマンショックもあり一回白紙になりました。その時既になくなっていると思っていた方が多かったので、もう一度建物の存在をアピールするために「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」の活動を始めました。

その後、カプセルの住人の暮らしにスポットを当てた本を作ったり、見学ツアーをすると、多くの人がビルの魅力に気付いてくれて、住人もどんどん増えていったんです。

ーー行動力がすごいですね! 積極的に保存活動をされていたのに、今回敷地の売却が決定したのには何か理由があるんでしょうか?

私がこのビルに関わり始めた時から、管理組合は建て替えか保存かの話し合い行っていたのですが、ずっと老朽化が大きな問題でした。実は保存に向けてある外資系企業が名乗り上げてくれていた中で、コロナ過でその話をまとめることができなくなり、敷地売却という結果になったんです。現在、カプセルの住人も徐々に退去し始めています。

ーーそうですか……。いつか住んでみたかったので、とても残念です。

「もうなくなっちゃうの?」ってよく聞かれるんですけど、敷地の売却はあくまでオーナーから管理組合経由で地主に敷地権を譲渡することなので、建物が今後どうなるのかはまだ未定なんですよ。でも、何らかの形で残していこうと思います。

敷地売却

カプセルが「面白い人」を引き寄せる

ーー前田さんにとって「ずっと残しておきたい」と思えるほどのこのビルの魅力ってなんなんでしょうか?

魅力はふたつあります。ひとつはやっぱり建物のコンセプトが単純明快で面白い。だから海外からも人気があるんだと思います。黒川さん達が提案した「メタボリズム」という考えが、竣工当時はぶっ飛んでいたと思われたかもしれないが、最近は部屋を借りながら移動する「ADDress」やキャンピングカーが流行ったりと、「家が移動する」っていうことが格段に必要とされていっている。50年経って、ようやく時代が追いついてきたんだなあと感じます。

ーーもうひとつは、やっぱり住人の魅力ですか?

ずっと会社員をしていると、周りには同じような思考の人しか集まらないじゃないですか。だけど、ここには年齢も仕事も性別も関係なく、「ただ中銀カプセルタワービルが好き」という共通点だけで、何か一芸のある面白い人が集まるんです。

ーー「類は友を呼ぶ」みたいな。

「ゴキブリホイホイ」じゃないけど、この建物には何か引き寄せるものがあって、その力に反応した人が吸い寄せられていくんだと思います。私もそのうちのひとりで、人生をカプセルに狂わされてしまいました(笑)。

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