新パーパスに込めた思いと、文化を愛するJTの風土
JTといえば、「ひとのときを、想う。」というワードが印象的です。今回、新しいパーパス「心の豊かさを、もっと。」を発表したのは、どのような経緯があったのでしょうか。
新パーパスといっても、全く新しい概念を発明したわけではありません。世の中の未来を想像・洞察した上で、むしろJTが今まで従事してきた活動を振り返り、自分たちが持つ価値観、進むべき方向性を考え抜くことで、「心の豊かさを、もっと。」に辿り着いた形です。
JTはこれまでも、「心の豊かさ」を追求してきたということですね。
前身である専売公社時代に遡ると、1968年の長期経営計画に「豊かなよろこび」という文言を使用しています。1985年の日本たばこ産業の設立時には、「心の豊かさを創造するマーケティングカンパニー」をミッションに掲げていました。1996年には、delightコンセプト「多様なであいの接点に生まれる発見、驚き、喜びの瞬間である」を策定しています。この「ディライト」という言葉は、一定の年代の方々には聞き覚えがあるかもしれません。一貫しているのは、ゆとりや余白、隙間の時間のような価値観を大切にするということです。嗜好品を扱う会社ということもあり、社員にDNAとして受け継がれているのでしょう。
ゆとりや余白は大切ですが、社会的な価値としては理解されにくい印象です。なぜその点を強調するのでしょうか?
科学や技術が進化すると、人々の生活は便利になり、社会は合理的かつ最適な方向へと進みます。しかし、人間は必ずしも合理的な物事だけを好む存在ではありません。ひと昔前までは、まだ“「無いものがある」時代”でした。でも現代は製品やサービスが飽和し、“「無いものがない」時代”に突入しつつあります。社会に隙間のようなものも減っているんですね。そこを追求するのが、我々の存在意義だと考えています。
便利な生活や社会を追求する企業が多いなかで、JTは特殊な存在ですね。
大瀧さん:文化人類学者・梅棹忠夫さんの言葉に「文明とは腹の足しになるもの。文化とは心の足しになるもの」というのがあります。JTが追い求めているのは、この「文化」の方に近いからでしょう。激しい時代の変化の中で社会に貢献していくために、JTはいま一度「文化」や「心の豊かさ」に立ち返ることが必要だと考えています。