毎日に余白を
届ける

価値観発見
メディア

「心の豊かさ」とは何か?JTのR&Dチーム「D-LAB」が挑戦する豊かな未来をつくるための実験室

分断を乗り越えるために大切なのは、曖昧さや複雑さ

たしかに編集部「心の豊かさ」が欠けることは、SNSにおける分断やフェイクニュースのような社会問題にもつながっているように思います。

大瀧さん最近の社会を見て感じるのは、「見えにくさ」と「見えやすさ」が、共存していることです。テクノロジーが進展し、文明が開かれると、他者に対する外形的な兆候が見えづらくなると思うんです。例えばかつて、所得の高い人・低い人は、ある程度外見で見分けることができました。しかし最近は来ている服、食べているものなど、大まかには同じですよね。同じことがSNSでも起きているのかもしれません。私は小学校6年生の娘がいるのですが、彼女のSNS内での友人とのコミュニケーションの雰囲気や実態は、外から見ると気づきにくいわけです。

たしかに編集部誰が何をして、何を考えているかが、一見してもわからない。それによって相互理解が希薄になるのは、あり得るかもしれません。一方の「見えやすさ」とは、どのような現象でしょうか?

大瀧さん現代は凄まじいスピードで人類が物事を発明しています。この流れは、ソリューションにもなる一方、概念によるラベル貼りにもつながります。「スタートアップ」「高齢化」「地方創生」のように、「次はこれ」「次はこれ」とトレンドや課題を増やすのは、線引きによって世界を見えやすくするためです。曖昧にしていた物事が可視化されるため、多様性は拡大されるのですが、区別が生まれて分断も促してしまう。

たしかに編集部「違い」にばかり目を向けていると、それは拡大するばかりで、新たな制度や規約、設備も必要になってくる。それが分断の原因になることも多いということですね。

大瀧さん私は、同時に“最小同質”のような考えも重要になると思います。つまり、「違い」ばかりに注目するのではなく、共通する部分にももっと目を向けるということです。多様性を尊重するために、あえてルールやシステムを最小限に抑えて「ここだけは守ろうね」というラインを作り、それ以外の違いはお互い認め合う。そんな視点です。

たしかに編集部それぞれの「心の豊かさ」を重視する、JTらしい発想です。

大瀧さんデカルト以来の近代社会は、複雑なものを分解し、一つ一つ要素として捉えてアプローチすることで発展してきました。すると部分最適は生まれまるのですが、全体の調和につながりにくい。複雑な世界が絶妙な関係で調和していることを、複雑なまま見つめることも大切だと思うんです。

たしかに編集部多様な個性と全体としての調和、両方に目を向けるのは難しいことでもあります。

大瀧さん「自分」という日本語は、“独自”の「自」と“部分”の「分」から成り立っていると考え方があります。私たちは、個体であるとともに、複雑な全体の中の一部でもあるのです。近年の”多様性”は、どうしても「自」の方に寄りがちで、もう少し「分」の方も大事にした方がいい。過度な同質化は硬直に向かいますが、過度な多様化は崩壊に向かうからです。一番大切なのはバランスで、それを緩やかに受け入れる寛容さではないでしょうか。D-LABもそのように、複雑系の中で広い範囲の仲間を増やし、緩やかで自然な時間軸の中で、新しいものを創造していこうと思います。具体的に何を目指すかは、一定程度の曖昧さを残していいと思っています。

編集部のここが「#たしかに」

多様性や持続可能性といったグローバルなテーマは、私たちの身の回りにおいても重要な課題です。一方で、一つのテーマを過度に追求することで、見えなくなる課題も発生してしまう。個別の最適だけでなく、全体との関係性の中で、本当の豊かさは実現されるのでしょう。大瀧さんの考えは、少し違った視点から世の中を捉えるヒントを与えてくれました。

日本経済を担う大企業が、時代が求める新たな価値観に対応するためには、全く新しいアプローチに挑むことも必要です。「心の豊かさ」を追求するJTのD-LABは、これまでになかったモデルを、私たちに見せてくれるかもしれません。

取材・執筆:相澤優太 撮影:布川航太 編集:#たしかに編集部

記事を読んで「たしかに!」っと思った方は
ぜひ下記ボタンをタップしてください

follow us
Twitter
Facebook
Instagram