感情のコントロールで変わる、個人のライフスタイル
満倉教授はなぜ、感性アナライザの研究を始めたのでしょうか?
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんとの出会いが大きかったです。体を動かすのに必要な筋肉が徐々にやせていき、力が入らなくなる病気ですが、会話や表情の変化を通じて感情を伝えることも困難になります。脳波から感情を可視化できれば、病に苦しむ人たちを支えられる。そうした思いもあり、研究を進めてきました。
難病を抱える人々のコミュニケーションにも活用できるのですね。
そうです。最初は脳波から文字を生成するシステムに挑戦していたのですが、多言語対応の壁など困難な点も多かった。そこで考えついたのが、例えば“りんご”を頭に浮かべたら、デバイスにりんごの画像が表示させられるような仕組みです。そのためにはまず、人が心の中で思っていることを理解しなければなりません。その第一歩として、感性アナライザの開発に至りました。
皆さんも、例えば無自覚のうちに緊張したり、ストレスを感じたりすることも多いと思います。夢中になって仕事に打ち込んでいる時にはストレスを感じないのに、後から疲れがどっと押し寄せることってありますよね? アンケートのような従来型の手法では、回答者が自分の状態を十分に把握できず、データの精度が下がってしまうのです。だからといって、一日中「ストレスが溜まっているか」を観察しているのも現実的ではありません。そこで、感性アナライザが小型化し、いつでも持ち運べるようになれば、歩数や脈拍のように感情を計測することができるわけです。
自分でも気づかない感情をしっかりと把握し、コントロールできれば、心身の健康につながりそうですね。
対人関係はもちろん、気候変化やPCの不調、ちょっとした雑音まで、日々の生活には自分でも気づかない「マイクロストレス」が蓄積されています。それが溜まりつづけると、最悪うつ病に至ってしまうことも多いです。逆にいうならば、マイクロストレスが溜まり始めた時に対処することで、健康な状態を保つことができる。“ストレスホルモン”のコルチゾールを減らしたり、“幸せホルモン”のセロトニンを増やしたりと、感情をコントロールしやすくなるでしょう。