物語の途中で話を忘れ、ほっこりさせてくれるロボット
岡田教授たちが開発した「トーキング・ボーンズ」は、昔話をうまく話せないロボットです。
『桃太郎』の話をしてくれるのですが、途中で「誰が川に洗濯に行ったんだっけ」「何が流れてきたんだっけ?」と内容を忘れてしまう。聞いている人が答えてあげると、「あっ、思い出した」と話を続けます。語り手としては不十分なのですが、これが「弱いロボット」なのでしょうか?
他力本願な点が、「弱いロボット」の特徴です。その一つである「ゴミ箱ロボット」は、その名の通りヨタヨタと動き回るゴミ箱なのですが、自力でゴミを拾うことはできません。周りにいる人間の手助けを上手に引き出し、ゴミを拾ってもらうことで、結果としてゴミを拾い集めてしまう仕組みです。
苦手なところがあると、手助けしてあげたくなりますね。どこか可愛らしさも感じます。
子どもたちにも人気なんです。「トーキング・ボーンズ」に対しても、得意気になってストーリーの一部を教えてあげると、どこか気持ちがいいのでしょう。
とはいえ、一般的に浮かべるロボットのイメージからすると“ポンコツ”とも言えますよね……。なぜそこにアプローチするのでしょうか?
人が得意なところは人に手伝ってもらい、ロボットがすべきことはロボットがやる方が、実は効率的でスマートだからです。それを「賢い」と呼ぶかは別ですが、他の弱いところを補うことで、自らの強いところが引き出されます。
例えば日本で人気を博している、中国のスタートアップ企業が開発したネコ型配膳ロボット「BellaBot」。「BellaBot」は飲食店などで料理を客席まで運んでくれるのですが、配膳といっても運ぶのはテーブルの前までで、実際に置くのはお客さんです。移動もどこか心もとないのですが、すれ違う人は気を遣って避けてくれます。ホールスタッフの代替をするような完璧なロボットではないわけですが、その分開発コストを下げられるため、多くの飲食店で導入されているのです。結果として、現場に貢献していますよね。
ロボット側が完璧じゃなくても、トータルで運用されているなら、問題はないということですね。
運用もそうですが、ロボットを手助けすると、人間も嬉しい気持ちになる点に注目すべきでしょう。少し話題になっているパナソニックの「NICOBO(ニコボ)」は、私たちも共同開発で携わったのですが、ユーザーの傍にいることしかできません。それでも暮らしの中にほっこりとしたひと時を与えてくれます。必ずしも機能万全なロボットだけが、人間の役に立つとは限らないんですね。