毎日に余白を
届ける

価値観発見
メディア

その不安は、あなただけの問題じゃない。集英社のウェブメディア「yoi」が寄り添う、女性たちの心身、性の悩み

ネガティブワードへの偏向が、他者への共感を妨げてしまう

たしかに編集部分断という問題を考える時、メディアの影響も無視できません。高井さんはメディアの世界に身を置く中で、感じることはありますか?

高井さんSNSの世界では、ネガティブワードがバズりやすい傾向にあります。「やってはいけないファッション」や「老けて見えるメイク」などですね。「yoi」の読者層には、妊娠や子育てに関心のある方も多いですが、SNS上ではどうしても不安を煽る話題が多く目につきます。本当はもっとニュートラルに情報に触れられる場所がデジタル上にあってもいいはずなのに、どうしても偏ってしまうようです。

たしかに編集部インターネットの普及により、一般の方が簡単に情報を発信できるようになったことも、大きく関係していますよね。

高井さん例えばフェムテックでも、私たちのような編集者は、薬機法などに従いながら、表記をはじめ、効果についての言及はとくに誤解を生まないよう、記事を複数人で精査します。一方でSNSの特徴は、知見がなくても簡単に発信できてしまうこと。そのため、受け取る側には「この情報は正しいのか」「この発信者はどこまで信頼できるのか」と、一度立ち止まるスタンスが求められるのではないでしょうか。言い換えるならば、「私たちにはまだ、知らないことがたくさんあるんだ」ということを自覚することだと思っています。

たしかに編集部知識不足が分断につながるのであれば、「知らないことがあること」を自覚するのは大切な姿勢です。

高井さん「100%が見えていると思わないほうがいい」「他にも考え方があるんじゃないか」「自分が触れていない情報があるかもしれない」と、私たちは常日頃から意識した方が良いのでしょう。例えば妊娠や出産への考え方に、正解はありません。さまざまな意見や価値観を認め合い、一つの答えを押し付けない社会が理想です。唯一の真実は、価値観はどんどん変わるということだけでしょう。

たしかに編集部多様性を尊重し、お互いを理解する上で、“知る”ことが重要な役割を果たすのは、なぜだと考えますか?

高井さん単に“知る”と言っても、表面的な知識では不十分です。“知る”ことの重要性は「共感すること」「心が動くこと」にあると考えます。今は誰でも、検索すれば情報自体は手に入ります。でもそこに共感がなければ、本当の意味での理解にはつながりません。

たしかに編集部知るための情報自体はあふれているのに、むしろ分断が広がっている要因は、そういった部分にもあるのかもしれないですね。

高井さん「yoi」では、一つの記事からポジティブな変換を最大限に生み出すことを目標としています。例えば20代の女性が私たちのメディアを見て、上の世代の親御さんなどにシェアしていただけるような記事です。心が動かなければ、シェアするような次のアクションにはつながらないでしょう。本当の意味で深いところまで理解していただける記事が、読者にも社会にも役立つ。そんな思いで、これからも励んでいきたいですね。

編集部のここが「#たしかに」

インタビューの中で「最近読んだ本で、また新しい価値観に出会えた」と、嬉しそうに話していた高井さん。過去の自分になかった考え方ができるようになるプロセスを、心から楽しんでいるようです。

そして何より、編集者としての責任感を強く持ち、一つ一つの記事制作に取り組んでいる姿勢を感じました。多様性の時代にメディアが果たすべき役割を真剣に考え、向き合うことで、多くの読者が共感できる情報が発信されるのでしょう。

生物学的な性差やジェンダー、世代を超えた相互理解にもう一歩近づくために、「わからない」をそのままにしない。「知らない世界がある」を自覚して「もっと知りたい」と行動していく姿勢を、お手本にしたいです。

取材・執筆:相澤優太 撮影:布川航太 編集:#たしかに編集部

記事を読んで「たしかに!」っと思った方は
ぜひ下記ボタンをタップしてください

follow us
Twitter
Facebook
Instagram