ドイツで花のスペシャリストを目指す
——男性のフロリストって珍しいですよね。小さい頃から花が好きだったんですか?
祖父が農家をやっていて、小さいころから手を動かすことや植物が好きでしたね。愛読書は『趣味の園芸』でした。
——なかなかシブい愛読書ですね(笑)。
でも大学では日本の伝統芸能にハマり、全国各地の祭りの和太鼓や踊りを学びに行ったり、舞台で披露したりしていました。この世界で生きていこうと思ったこともありましたが、せっかくなら就職活動も経験するかと探し始めたんです。これまでやってきた和太鼓や踊りのように、自分が好きで人にも喜んでもらえるものって何かなと考えたら、「あ、花だ!」と思い出して。そこで入社したのが、全国にあるフラワーショップを手がける会社でした。
——ドイツに行こうと思ったのはなぜですか?
会社で配られたテキストにたまたま「マイスター学校の理論的な教授法」のことが書いてあったんです。
高校の時にカナダに留学した経験があり、いつか海外で働いてみたいなと思っていました。テキストを通じて、「ドイツ国家認定フロリストマイスター」という資格も知り、マイスターを目指せば自分の好きな花の仕事をもっと追求できるし、海外暮らしもできる。両方が叶えられるなと思って。
——「ドイツ国家認定フロリストマイスター」とはどんな資格なのでしょう?
国が認定したフロリストのスペシャリストで、経営や教育の権限も担う国家資格です。フロリスト以外にも製パンやビール醸造、機械工や整備士などさまざまな業種のマイスターがあります。
——なるほど、日本でいうと「職人」のようなものをイメージしていました。
もちろん、職人という意味・役割もあります。ドイツのマイスターは実務を経験しながら職業訓練校、マイスター学校を卒業し、国家試験に合格することで認定されるんですが、僕のように外国からマイスターを目指す人への情報は少なくて。人のツテをたどって少しずつ情報を集めながら、31歳の時にドイツに渡りました。現地ではマイスターのいる花屋で働きながら経験を積み、学校に通う権利を得て、33歳から2年間学生に。35歳のときに国家認定フロリストマイスターを取得しました。