いろいろな価値観に触れ、選択肢が増えた。
――著書の「サラリーマン2.0 週末だけで世界一周」で、旅の目的は「さまざまな生き方を見に行くこと」とおっしゃっていたのが印象的でした。
観光地へ行くより現地の人が暮らす地域で、人と触れ合うことが好きなんです。キューバに行った時のことですが、荷物をたくさん抱えた子連れのお母さんがいたんです。英語は通じないけど、ボディランゲージで「お手伝いします」って荷物を運んであげたんです。そしたらご飯食べていけって(多分、そんな感じのジェスチャー)ご馳走になったんですね。まさか旅先で家庭料理が食べられるなんて思ってなかったからほんと嬉しくて、現地の方の優しさにも感動しました。
(キューバでの一枚)
―― いいですねぇ。現地の暮らしに触れる旅、憧れます。でも怖い思いとか、したことはないんですか?
あんまりないですね。本当に危ないところは避けています。それに旅を重ねることで、直感が磨かれていくというか。僕ガタイもいいので(181cm,90kg)見た目である程度回避できている部分もあるかもしれません。あと、何かあれば走って逃げる!これに尽きます(笑)。
――逃げるの大事です!ところで東松さんはいつから、リーマントラベラーを名乗るようになったんでしょう?
2016年です。社会人3年目の2012年に旅に目覚め、そこからは年に7〜8回ほど、最初はただの旅好きでした。7〜8回っていうのも自分ではそんなに多いとは思ってなくて。ところが周りからは、普通じゃないよと。たしかに客観的にみると、お金も時間も労力も旅にかけすぎてるなと気がついた。この情熱には何かあると考えた結果、旅先でいろいろな価値観に触れることに魅力を感じていると気づいたんです。
――それが「さまざまな生き方を見に行く」ってことなんですね。
仕事中心の生活をしていると、どうしても会社での評価が自分の全てという感覚になりがちじゃないですか?それってすごく狭いですよね。でも世界に出てみると、いろんな人がいて、文化も食べ物もさまざま。旅は、会社以外の別のコミュニティに簡単に入れる手段。旅を通じものさしも増えていくんです。
基本ひとり旅なので、なんでも自分で決めるんですよね。それもポイントでしょうか。旅って成功体験しやすいんです。キューバのお母さんの時もそうですが、手伝うって決めて行動したら、他ではできないような体験ができた。
―― たしかに、成功体験が簡単にできるのはいいですね!心の元気にもつながりそう。
そうなんです。成功体験が続くと、ポジティブになれるんですよね。僕、迷って考える時間がいちばんもったいないと思っていて。だって1歩も動いていない状態ですよね。それだったらとりあえずやってみて、違ったらやめればいいと思うんです。
―― 私も、とりあえずやってみる派です。
それを、普通のサラリーマンである僕が伝えるのは意味があるなと思ったんです。例えば、すごく特別な人、ビジネスの第一線で活躍する人や著名人に、「選択肢はたくさんある!1歩を踏み出せ!」って言われても、「あなたはできるかもしれないけど、普通の人には…。」と尻込みしちゃうじゃないですか?そうではなく普通の僕が言うことで、「自分もできるかも」と思ってもらえるんじゃないかと。
―― たしかに、誰に言われるかって大事かも。でも東松さんもすごいですよね。サラリーマンを辞めずに世界一周を実現されたんですもんね?
広く知ってもらうため、インパクトがあることをやりたかったんです。でも、旅をたくさんしていること以外は普通のサラリーマンですよ。リーマントラベラーはあくまで仕事が優先です。週末海外旅行の良さを知ってもらいながら、「いろんな生き方があって、自分で選べるんだよ」ということを、大人だけじゃなく子どもたちにも伝えたい。今は、学校などでも講演しているんです。
(日本での講演会の様子)