従来のセオリーを覆す、革新的なラーメンを探求する
ーー本日はよろしくお願いします! ちなみに、風のウワサで店名の彩音(sign)はMr.childrenの曲名が由来と聞いたのですが、本当ですか……?
畠山 本当です(笑)。関係者にMr.childrenが好きな人が多かったので、曲名を店名にしたらおもしろいなという話になりまして。曲の中からいくつか候補を出して、当て字を作って、一番かっこよかった「彩音」になりました。
ーー斬新ですね! たしかに、ずっと店内にもMr.childrenの曲が流れている(笑)。
畠山 営業時間中は徹底してずっと流していますね(笑)。
ーーこちらのお店ではどんなラーメンを出しているんですか?
浅井 うちでは、基本「醤油」「塩」「煮干し油そば」の3本柱でやっていて、全部同率でおすすめしています。それぞれ全く違う個性のある、こだわりのラーメンになっています。
ーー気になります。さっそくお店おすすめの3つの特製ラーメンをお願いします!
▲「特製醤油」1,150円(税込)
ーースープが透き通っている……!こだわりポイントを教えていただけますか?
浅井 醤油は、地鶏100%でとったスープと生醤油を使っています。上に載っているのは、鶏チャーシュー、豚チャーシュー、ワンタン、メンマ、煮卵ですね。
ーーボリューミー! そしてチャーシューがぷりんぷりんですごくおいしいです。
浅井 低温で優しくゆっくり調理しているので、やわらかさと弾力を楽しんでいただけるいと思います! 麺は芳醇な醤油とスープの香りを素直に持ち上げる綺麗なストレート細麺を使用しています。
▲「特製塩」1,150円(税込)
ーーこちらの「塩」もまた、きれいなスープ……。
浅井 「塩」は、他にない少しトリッキーな感じのあるスープになっています。お酢やワインビネガー、レモン汁に加え、数種類のリキュールなどをブレンドしています。なぜか、日本酒を入れてキレや酸味を出していると言われることが多いのですが、それは誤解なんですよね。脂は、鶏と豚のチャーシューの切れ端の脂部分を炒めて使っています。
ーーいろんな素材が入っているのに、きちんとまとまっているのがすごいですね。
畠山 「塩」が一番難しいんですよね。麺はスープのキレに合わせたパツっとした歯切れのよい細麺に全粒粉を練りこんで風味を生かしています。最近は、3種類の中でもこの「塩」が特に人気がありますね。
▲「特製煮干し油そば ワンタンスープ付き」1,150円(税込)
浅井 「油そば」は、煮干しがテーマになっています。鶏油(チーユ)と実油と卵黄で、煮干しもしっかり感じつつ、マイルドで食べやすい味にしました。煮干しを入れすぎると苦味が出てしまうんですよね。もちろんそれがお好きな方もいらっしゃるんですけど、誰が食べてもおいしいラーメンにしたかったので、このような配合にしています。
ーーマイルドで食べやすいのに、しっかりパンチもあるなと感じました。
浅井 一口目の引きを強くしたかったんです。最後まで飽きずに食べられるように味付けをしました。麺はつるもち触感で、噛むほど煮干しタレの味が膨らむので、噛みしめる楽しさを感じてもらいたいですね。
ーーどれも違う個性があって、すごくおいしいです。
浅井 ありがとうございます。あと彩音では、月替わりで「限定らぁめん」を出しています。
ーー月替わりの限定ラーメン! 気になります。
▲2月限定らぁめん「シーラカンス」1,500円(税込)
浅井 こちらは、2月の限定らぁめん「シーラカンス」になります。
ーーシ、シーラカンス……? 名前も見た目もかなり独特ですね。
畠山 実はこれもMr.childrenから名前をとっています(笑)。
ーーそうなんですか?!
畠山 Mr.childrenの『深海』というアルバムがあるんですけど、その中のインスト(Instrumental)を除いた一番最初の曲なんです
通常、アルバムCDってシングルですでに出ていた曲を集めて売るじゃないですか。でも当時Mr.childrenは、すでにシングルでたくさんの名曲を出していたのに、それを入れずに『深海』というアルバムを作ったんですよね。従来のセオリーを壊して自分たちの好きなことをやっているところに感銘を受けて、名付けました。
ーーなるほど。ではこの「シーラカンス」も、従来のラーメンを覆すようなラーメンということですね。
浅井 そうですね。スープは牛白湯で、上に乗っているのは紅茶に漬けた素揚げ卵、チーズとバターたっぷりのマッシュポテト、キャロットラぺ、大根の出汁煮、牛すじ肉です。
▲化石から命が生まれるイメージなんだとか。
ーー本当に、今まで見たことがないラーメンです(笑)。独創的すぎる……!
畠山 「限定らぁめん」は、今までのラーメンの延長上でどこまで進化できるかではなく、とにかく新しいものを作ろうという思いで毎月開発している商品ですね。
浅井 試作していく中で、当初思い描いていたものと全然違うものになることもあります。ちなみに今回のシーラカンスに、本物のシーラカンスは入っていません(笑)。
ーーそうですよね(笑)。魚介系かと思いきや、全然違ってびっくりしました。全く予想がつかないのも楽しくて、毎月リピートしてしまいそうです。
畠山 この屋台骨を支えている定番の「醤油」「塩」「煮干し油そば」の3つの商品があるからこそ挑戦ができるんですよね。価格も1,500円と強気なんですけど、そのぶん良い素材を使って見たことのないラーメンを提供できるので、毎月「限定らぁめん」を楽しみに来てくださるお客様も多いです。
ーー珍しいなと思った点だと、メニューに「日本酒ペアリング」があるのも気になりました。
畠山 日本酒を出しているラーメン屋さんはすでにあって、自分の店でも絶対に置きたいとは思っていたんです。でも何か新しいことをやりたいと思った時に、「イタリアンのコース料理にペアリングがあるように、ラーメンでもできないか?」という発想が生まれて。
実際に、ラーメン屋で日本酒のペアリングやっているお店はなかったので、やってみることにしました。やっぱり店員さんにおすすめされると飲みたくなるじゃないですか。
ーーすごくわかります。ついつい飲みたくなってしまいます。
畠山 プロが選んでくれたと思うと、よりおいしく感じますよね。ただ日本酒が置いてあって「好きに選んでください」とお客さんに委ねるよりも、店側が「ラーメンの味に合う日本酒」を選ぶことで喜んでくれるお客さんも多いんじゃないかなって。
ーー日本酒のペアリングはどうやって選んでいるんですか?
畠山 実はうちのメインスタッフがみんな新潟出身で、日本酒にめちゃくちゃ詳しいんです。たくさんの銘柄を飲んで、蓄積された知識があったんですよね。
浅井 ただ、ラーメンに合わせて飲むことはなかったので、ひたすらスープを飲んで、日本酒を飲んで合うものを選んでます。
ーー実際にご自身の舌で味わって選んでいるんですね。たしかに、醤油ラーメンと「楽器正宗」を飲んだ時、キレが増してすごくおいしかったです。
畠山 よかった! ざっくり言うと、「醤油」はスープの旨味の強いので、同じく旨味が強い日本酒をあてることが多いです。「塩」はキレが強いので辛口系で。「煮干し油そば」は脂っこいのですっきり系ですね。あとは、スタッフに実際に飲んでもらって選んでいます。
浅井 酒屋さんから仕入れるたびにラインナップを変えているので、いろんな日本酒を楽しんでいただけると思います。
ーー訪れるたびに日本酒が変わっているというのも楽しいですね。実際に日本酒を頼むお客さんは多いのでしょうか?
浅井 かなり多いですね。日本酒は破格のサービス価格で提供しているので人気です。
ーーラーメン屋さんは「効率重視」というイメージがあるのですが、日本酒があると回転が遅くなってしまいそうな気も……。
畠山 たしかに、お酒を飲むと滞在時間は長くなりますよね。実は、ゆっくり過ごしたいという方にも楽しんでいただきたいという思いがあったので、お店の広さに対して席数がたくさんとれるこの物件を選んだんです。
ーーそういった狙いがあったんですね。
畠山 ラーメン食べてさっと帰りたい方も、お酒を飲みながらゆっくりと過ごしたい方もどちらも楽しめるお店にしたかったんです。坪数が9に対して今は14席あるんですけど、これが6~8席になるとどうしても回転勝負になってしまう。
逆にラーメン居酒屋のようにするともっとキャパが必要になってしまうので、この店舗は目的に適ったちょうどいい物件だったんです。
ーー絶妙なサイズ感。
畠山 そうなんですよ(笑)。そのぶんキッチンはかなり狭くなってしまっているので、スタッフのみんなが大変なんですけど。
浅井 オペレーションを頑張ってみんなで回しています(笑)。
ーーキッチンの狭さを感じさせない提供スピードに驚きました。これだったら女性一人でも気軽に立ち寄れそうです。
畠山 女性もぜひ気軽に食べに来てほしいですね。ラーメンに詳しい方も詳しくない方も、いつも決まった味を食べたい方も毎回新しいものを食べたい方も、どなたにでも喜んでもらえるお店でありたいなと思います。
浅井 これからもお客様に「こんなの食べたことない!」と驚いていただけるような新しいラーメンを作っていきたいと思っていますので、期待していてください!
編集部のここが「#たしかに」
昨年10月、競合ひしめくラーメン業界に突如現れた「麺屋 彩音(sign)」。
革新的なラーメンメニューはもちろんのこと、従来のラーメン店の概念を覆す仕掛けがたくさん散りばめられていました。
とにかく早く食べて早く出ないとという意識から、お店でラーメンを食べることにハードルがありましたが、ここでなら落ち着いてラーメンを楽しめそうです。
それに、月替わりの「限定らぁめん」や、仕入れの度にラインナップが変わる日本酒など、とにかくリピート欲が掻き立てられる……!
後半では、「麵屋 彩音(sign)」が生まれた背景や、独創的なラーメンに込められた思い、お二人の今後の展望について伺っていきます。お楽しみに!
後編はこちら▶︎お客様だけでなく働く仲間にも価値を。「麺屋 彩音(sign)」のチームが目指す新しいラーメン店の在り方
麺屋 彩音(sign)
所在地:東京都品川区西五反田2-18-3 グレイス五反田 1F
(JR山手線 五反田駅徒歩3分)
お問合せ:https://twitter.com/MenyaSign(Twitter:@MenyaSign)
営業時間:11時30分~14時30分、18時~22時
(緊急事態宣言時は11時~15時、17時30分~20時)
お支払い方法:現金
取材・執筆:むらやまあき 編集:#たしかに編集部