出会いが重なり生まれたラーメン店
――今回は、「麵屋 彩音(sign)」が誕生した背景を伺っていきたいと思います。オーナーの畠山さんは、もともといくつかお店を経営されているんですよね。
畠山 はい。イタリアンのレストランやカフェの他、雑貨店やレンタルスペースなどの経営に携わっています。この「麵屋 彩音(sign)」が一番新しい店舗ですね。
もともとは僕、会社員でシステムエンジニアをやっていたんですよ。でも、いいところに住んで、いい服着て、いい暮らしをするっていうのに憧れて(笑)。経営だったら叶うと思ったので、仲間とタッグを組んでこの道に足を踏み入れたんです。
――そうだったんですね! 飲食店の経営が多いと伺いましたが、それはなぜですか?
畠山 食べるのが大好きで、自分でもよく料理するんです。だから、「食」の分野で経営をしたいというのはもともと考えていました。
――その中でも今回、ラーメンに焦点を当てたのはどうしてでしょうか。
畠山 僕自身、ラーメンが大好きだったんですよね。実は、プライベートで仲良くしている仲間の中に、以前イベントで知り合った人気のラーメン店の店主が何人かいて、僕が「ラーメン屋をやりたい!」と言ったら勉強させてもらえることになったんです。
ラーメン店を立ち上げることが決まって、誰かお店を任せる人を探していた時に、共通の友人を介して浅井に出会いました。
浅井 僕が神田のバーで週1回、月曜日担当で店長やっていた時に来てくれたんですよね。
畠山 そうそう。そこからプライベートな付き合いがしばらくあって、ラーメン屋を始める話が持ち上がったので声を掛けたんです。でも、実は彼の料理している姿も実績も全然知らなかった(笑)。知っていたのは、「料理人」で「ラーメン屋やりたがっている」ということくらい。
浅井 そうですよね(笑)。
――そんなことあるんですね?!(笑)
浅井 僕はもともと大手チェーンの飲食店で料理人をやっていて、今後どうしていくか悶々としながらいろんな店舗を転々としてたんです。そんな時に声を掛けてもらって。
実はその時ちょうど同時に、4~5人から「一緒に店をやらないか?」と声かけてもらっていたんです。でも、お話をしていて一番一緒に働きたいと思ったのが畠山だったので、「ラーメンの経験はないけれど、ぜひ働かせてください」とお願いしました。
畠山 その話、僕は後から知りました(笑)。
――畠山さんはなぜ浅井さんをスカウトしたんですか?
畠山 人柄ですね。僕は店を作るうえで3つのファンづくりを大事にしていて、それが「料理のファン」、「人(接客)のファン」、「コンセプトのファン」です。
もちろん全部大事なんですけど、「人(接客)のファン」は特に大事だと考えています。従業員が楽しく仕事ができているかどうかは店全体の雰囲気にも関わってくるんですよね。そもそも肯定的で平和な人が集まればうまくいくというのが経験上あったので、今回は性格を重視しました。浅井は、すごく平和な人柄なんですよ(笑)。
浅井 ありがとうございます(笑)。
畠山 浅井が入ってくれることになったので、まずは僕自身がラーメンの勉強を始めました。オーナーという立場で意見を言うにしても、現場のことをわかっている必要があると思ったんです。だから、まずはひたすらラーメンを作ろうと思って50回くらい作りました。
――オーナー自らラーメンを……!
畠山 はい(笑)。「だし汁」と「醤油だれ」と「脂」の3つが揃ってラーメンになるんですけど、一番最初に作った時は脂を入れる発想がなくて、ただの蕎麦みたいになりました(笑)。
それから作っては仲間に食べてもらうというのを繰り返して、ラーメンづくりというものを理解していきました。実際に自分で手を動かすことで、「何がポイントで何が大変なのか」、「何が頑張ればできることで、何が無茶なのか」というのがわかるようになったんです。
――ご自身で実験を重ねていったんですね。
畠山 まさに実験でしたね(笑)。次は自分が経営しているレンタルスペースを使って、週に1回、ラーメン屋をやりました。友人に声を掛けたら、毎週50人くらい来てくれましたね。
利益を上げることが目的ではなくて、ラーメン屋を運営するというのはどういうことか知ろうと思ったんです。「限られた時間で何十杯も作らなきゃいけないというのはどういうことか」、「何が大変なのか」って。
浅井 僕もそこで手伝わせてもらいながら、ラーメンを作る感覚を身に着けていきました。畠山の塩ラーメン、おいしいんですよ(笑)。
――気になります(笑)。
畠山 実際に自分で作って運営して一通り理解できたのは大きかったですね。そこから仲間のラーメン店の店主たちに勉強させてもらいながら、今の「麵屋 彩音(sign)」の味を完成させて、2020年の10月にこの五反田に店をオープンしました。