心が「うん」と言うことをやろう。
——新型コロナウイルスの影響を受けて、大変だったんじゃないですか?
そうですね。まず緊急事態宣言に合わせて、全店休業しました。従業員の出社を控えた取引先も多かったですし。デリバリーという選択肢もあったけど、ここはあえて休もう。その間、未来をしっかり描こうと。これまでずっと、目の前のタスクや売上を出すことに精一杯だったので、今のままでいいのかと自問しながら。
結果、見えたのは「自分自身を好きになるように生きる」ということ。オフィスワーカーさんを応援したい気持ちは変わりません。だけどもっと身近な、一緒に働いてくれる仲間や、生産者さん、家族そしてもちろん自分自身も同じように大切にしたい。仲間と一緒にいい人生を歩んでいきたいなぁと。
——自分自身や、身近な人の大切さに気づいた、と。
これまで、周りの期待に応えることをわりと意識して生きてきて。自分が本当にしたいことを我慢してきた部分もあったんです。子どもの頃から、周囲の期待に応えたいと常に周りの目を気にしていたところがありました。それに、営業をしていた頃は、世の中の負を解消したいと思っていたけれど、それってちょっとおこがましいのかなと感じるようにもなって。
もっと自分の気持ちに素直になるほうがいいんじゃないかって。そのほうがずっとワクワクできるし、そこに共感してもらうほうが、結局は良いサービスや商品を、求めてくれる方へ、届けることができるんじゃないかって。
——たしかに、共感してくれる人を想って考えるサービスは、アプトプットが変わりそうですね。
世の中、多様な価値観が広がりつつあり、一人ひとりを尊重する考え方にシフトしてきてると思うんですね。そんな中、何かヒットしそうな市場を狙っていくというビジネスモデルは、少なくとも自分は違うんじゃないかって。
それよりも、個に向かって深く共感を求めることが、自分にとっても周りにとっても、幸せな選択なんじゃないかと考えるようになったんです。
今、私自身は「事業をしている」という意識はあまりないんです。ただ楽しい。当たり前かもしれないけれど、自分がやりたいと思ったことだけ、やれる人生は楽しいですよね。しかもそうすることで、自分自身を好きにもなれるし。これからは、自分の気持ちに素直に、生きていきたいなぁと。
——やりたいことに集中できる人生って、たしかに楽しそうです。仕事で実現できたら理想ですね!
休業している間、仲間たちが「早く働きたい、早くみんなに会いたい」って言ってくれたんです。自分の生んだものが、他の誰かの人生の大事なものになるということが、こんなにも幸せなのかと。それを大事にしたいなぁと。心が「うん」と言うことだけに向き合って行こうという気持ちが、いっそう強くなりました。
(浅野さんとイナカデリコのメンバーの皆さん)
イナカデリコの「コ」は、サービスに人格を持たせたくてつけました。野山を駆け回り美味しい野菜を両手いっぱい、都会のみんなに届けたいという想いを込めて。私の分身として、仲間も一緒に、山あり谷ありの人生を歩んでいきたいです。
編集部のここが「#たしかに」
正直、誰もが浅野さんのように思い切って行動したり、躊躇なく前に踏み出したりすることは、なかなか難しいと思います。やりたいことだけやる!と私も言ってみたい(笑)。だけど、「心がうんと言うことだけに向き合う」「自分を好きになるように生きる」と言いきる浅野さんの言葉はとても気持ちがいいし、自分に正直な考え方ができるかどうかが、健康に生きるためにはたしかに大事なことなのかも、と改めて気づかせてくれました。浅野さん、ありがとうございました!
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取材・執筆:松村聡子 編集:#たしかに編集部