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「13歳からのアート思考」は、なぜ生まれたのか?フリーランス美術教師・末永幸歩さんの歩みから紐解く「愛するものに向き合う生き方」

アート思考は「自分の愛するものと向き合う生き方」でもある

たしかに編集部『アート思考』によって、末永さんご自身の生き方にも影響はありましたか?

末永さん大抵のことは「そういう見方もあるよね」と肯定できるようになり気が楽になりました。例えば今日のようなインタビューでも、以前は「しっかり考えをまとめないと!」と思っていたのですが、この瞬間もまだ探究している途中と捉えれば「答えの出ていない自分でもいい。数ヶ月後に考えが変化してもいいんだ」と、ありのままの自分を表現しやすくなりました。

たしかに編集部どんな自分も肯定できれば、相手のことも肯定できる気がします。

末永さんおっしゃる通りで『アート思考』の面白いところは、「自分を大事にすることと相手を大事にすることが共存できる」ところにあります。自分なりのものの見方を突き詰めていくと、自然と「その人にもその人なりの、ものの見方があって当たり前だよね」と気づけるんですよね。多様性を難しく考えるのではなく、まず自分の興味関心ごとに夢中になってみるといいかもしれません。

たしかに編集部素敵な考え方です!

末永さんあと子育てにも『アート思考』は役立っていて。現在3歳の子どもがいるのですが、大人には考えられない行動をするんですね。床に絵を描いたり、砂を口に入れてみたり(笑)。

たしかに編集部つい「やめなさい!」と怒ってしまいそうになるシーンですよね。

末永さんでもその子にとっては「自分なりのものの見方で世界を探究している最中」かもしれませんから。大人の常識や既存の考え方で、活動をやめさせるのはちがうなと。自分とは全然ちがう色眼鏡をかけて、異なる世界を見ている存在だと捉えて、見守るようにしています。

たしかに編集部素晴らしいですね!お子さんも伸び伸び育ちそうです。末永さんにとって「アート×子ども」は、大きなテーマとしてあるのでしょうか。

末永さんそうですね。実は現在、私の中で新しい『興味のタネ』が生まれていて。「子どもから新しいものの見方を教えてもらう」本を出版したいなと思っています。

たしかに編集部というと?

末永さん育児をしていると、子どもから教わることってたくさんあるなと思うんです。先日も子どもと2人で「学校ごっこ」をしながら、私が先生役で「はい、チャイムが鳴りました!みなさん席についてくださ〜い!」と声をかけたんです。すると「どうして座るの?」と聞かれたんですよね。ハッとしました。椅子に座って授業を受けなければいけない、ということすら固定観念だったなと。

たしかに編集部たしかに。一度立ち止まって「本当にそれでいいのだろうか」「他のやり方もあるのではないか」と考えるきっかけになりますね。

末永さんそうなんです。これまでの育児本は、「こんなふうに育てたい」「こうなってほしい」という内容が多かったと思うんです。でも逆に、子どもの自由な発想やものの見方から、大人の凝り固まった考えを壊すきっかけをもらう。そんな「アート×子ども」の新たな視点をみなさんに届けられたらと考えています。

たしかに編集部お話を聞いていると、いろんなことを経験しながら『興味のタネ』を育てていけば、人生は思っている以上に彩り豊かなものになるのだなと感じました!

末永さん私もまさか、子どもをテーマにした本を書きたいと思う日が来るなんて想像もしていませんでした。以前は先が見えずに不安になることもたくさんありましたが、振り返ると全ては「自分の愛するアート」につながっていたのだなと思いますね。

末永さん興味や好奇心に従って夢中になって生きていれば、どんなにバラバラに思えるできごとも、必ず「自分の愛するもの」という一本の線でつながる。人生、行き当たりばったりでいい。心からそう思えるのも、『アート思考』の賜物ですね。

編集部のここが「#たしかに」

自分らしさとは、なんだろう?自分らしい生き方、働き方がしたい───。

人生に真剣に向き合うようになった20代後半、美術館で絵画を見ることがとても楽しくなりました。自分の進みたい方向に迷っているとき。自信を失っているとき。絵画の前に立つと、無条件に元気をもらえるのです。それはなぜか?

命をかけて夢中で絵を描き続けた画家の生き様に、究極の「自分らしさ」を感じるからなのでしょう。

筆者は、生き方を伝えるライターと名乗り、世代・年齢・性別・国籍問わず、あらゆる人の生き方を聴き言葉にして伝えることを生業にしています。自身の『興味のタネ』と向き合ってみると、「人の想いや背景を知りたい」「これまで歩んできた道のりを紐解きたい」といった「人の生き方」への好奇心が隠れていました。そうしてあらゆる人の生き方=(ものの見方)を知ることで、自分の生き方の選択肢が広がっていく。世界の見え方が増えていく。その過程そのものに夢中になれるからこそ、生き方を伝えるライターという生業を心から愛せるのだと思います。

そして絵画を見ているときも「画家にインタビューをするかのような問いかけ」をしていることに気がつきました。

「なぜ、この絵を描いたのだろう」「この画家は、どんなふうに生きたのだろう」「絵を描きながら、どんなことを考えていたのだろう」「どんな想いを込めたのだろう」

心底「生き方を聞くこと、知ること、想像すること」が、好きなのだなと気づかされます。

末永さんの『アート思考』は「自分がふだん、どのように世界を見ているのか」自分なりのものの見方に気づく大きなきっかけになりました。そこから何を感じ、どう捉えたのか。探究を深めることで、「自分らしさ」はすくすくと育っていくことでしょう。

正解ではなく「自分なりの答え」に夢中になる生き方がしたい。そう強く思えた末永さんのインタビューでした。

取材・執筆:貝津美里 撮影:Hiroki Yamaguchi 編集:#たしかに編集部

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