これからは、自分のやりたいことに素直な人生を
ーー今、つよぽんさんは「シーナと一平」以外にデザインのお仕事も始められたと伺いました。
そうなんです。「シーナと一平」の立ち上げメンバーであり僕の上司でもある一人が大型印刷をやっていて、そこで新しく始まるデザインプロジェクトに誘っていただいたんです。
コロナ禍で「シーナと一平」のお仕事が少なくなってしまいましたし、僕自身もこれからデザインを始め、クリエイティブなことに挑戦したいと伝えていたのでよかったなと。
ーーエンタメ業界を志した理由にもありましたが、何か表現したいという気持ちや、クリエイティブへの興味関心というのはやはり強かったのでしょうか?
そうですね。興味はあった……けれどそうだ。僕、自分がゲイであることが本当に嫌だと思っていたから、たとえばものづくりだったりクリエィティブなことを好きだと表現すればするほど、ゲイだとバレてしまうんじゃないかという気持ちが幼い頃から強かったんです。
だから、学生時代は自分が好きだと思ったことと真逆のことをしていたんですよ。
ーー真逆。そうするに至ってしまったきっかけが……?
今でも覚えてますけど、中学1年生のときに普通に過ごしていただけなのに、クラスの女の子から「金子くんてさ、女っぽいよね」って言われたんです。「え、なんで?!」って。全くわからなくて、そこからめちゃくちゃ意識するようになったんですよね。
ドキっとしましたね……。バレる!だめだ!って。今から20年くらい前だから、テレビでも「オカマ」という呼び名でおもしろおかしい存在として扱われていましたしね。それに、田舎だったから余計に。
ーー今でもたくさんの問題を抱えていますが、20年前だとまだまだ正しい認識の浸透が進んでいなかったでしょうね。
そうですね。ちょうど思春期だったし、無意識になってはいけないと思って常に意識しながら行動していました。だから、意図的に美術をやってみたいけれど運動部に入るとか、理系科目が得意なのになぜか文系にいくとか、あべこべなことをやっていて。
それで苦労したわけじゃなかったけれど、今思えば自分の好きなことをやれていない期間が長かったなって。その反動で、今はやりたいことをやれるタイミングがあるならチャレンジしたいなと思うんです。それで、デザインの勉強を始めました。
ーーそうだったんですね。つよぽんさんは、どんなお仕事にチャレンジしてみたいですか?
言葉にすると安く聞こえてしまうかもしれないけれど、誰かの背中を押せるクリエイティブな仕事がしたいですね。人々の生活の中に溢れるものにクリエイティブなことで関われたらいいなという思いが強いです。面白い取り組みに対して「これに関わってるんだ」って周りに言いたいからという理由もあるんですけど(笑)。
5年間、「シーナと一平」でいろんなお客さんと接してきたのもありますし、自分のパーソナリティーとしても人と関わることはすごく好きなので、制作過程を一緒に楽しめたらうれしいですね。
ーーいいですね! 今は、カミングアウトの面も含めてセクシュアリティで生きづらさを感じることは前よりも減りましたか?
もちろん現状に対して思うことはたくさんあります。ただ、一人で抱えずに発信をするようになったのはたぶん、今のパートナーに出会えたからだと思います。
2人で中野区に住んでいるのですが、パートナーシップをとったのが一つ大きくて。自分がゲイだったことが嫌だった時期もあるけど、その頃と比べるとこんなに幸せなことってある?って思うんですよね。パートナーがいてくれるから自分が安定しているし、揺らがない。今がとても幸せだから、発信することへの悩みがなくなったかもしれません。
ーーそう思えるパートナーに出会えたというのは、とっても素敵なことですね……。
今までは仕事の発信がメインだったんですけど、デザインの仕事やクリエイティブな仕事をしたいと思ったときに、「なぜそれがしたいのか」という思いの部分もしっかり伝えていかなきゃなと思って。
そこに付随して、プライベートな部分やセクシュアリティな話も発信できるようになりましたね。
ーー最後になりますが、そんなつよぽんさんが大切にしている価値観があれば教えてください。
中学生のときの自分に、「そんな悩まなくてもいいよ」「ちゃんと未来に繋がるからね」って言えるような大人になっていたいと思っています。
もう自分がやりたくないことはやらなくていいし、やりたいことに素直に生きようと思っていますね。いつもかたわらに、小さい僕がいます。
ちなみに、近々の話ではないですが、パートナーと彼の地元であるオーストラリアに移ることも考えているんです。
ーーわあ、そうなんですね! オーストラリアいいなあ……。
コロナ禍というのもありますが、もう少し生活を見直してもいいのかなって。でも東京に友達も楽しいことも多いからまだわからないですけどね(笑)。
でもそれこそ、デザインの仕事をきちんとできるようになれば国が変わっても日本の企業さんともお仕事させてもらえるかもしれないですし。そのためにも今は、スキルをちゃんと付けるために頑張ります!
編集部のここが「#たしかに」
過去の自分を安心させられるような未来にいたい。
あの頃を肯定できるような大人になっていたい。
そう語るつよぽんさんの眼差しが、とても印象的でした。
本当にやりたいことを見つけるのに回り道をしてもいい。
一度は諦めたり手放したりした夢であっても、
生きている限り、いつだって何度だってチャレンジしていいのだと
背中を押してもらえたような気がします。
この時代において「自分らしく生きる」とは何か、
今一度、見つめ直してみるのもいいかもしれません。
つよぽんさん、ありがとうございました! オーストラリアにもいつか遊びにいきます!
金子翔太さんのInstagram
https://www.instagram.com/kaneko.peta/
シーナと一平のホームページ
https://sheenaandippei.com/
執筆・取材:むらやまあき 編集:#たしかに編集部