わかるをできるにつなぐ「BASE」
ーー厳しいといわれる書店経営ですが、何か秘策があったんですか?
西村:僕は実際に小売業の会社を経営しているので、書店にした場合どれくらい売り上げたら黒字になるのか数年分の試算を出してみました。すると、家賃とのバランスを考えると、いくら計算してもまったく黒字にならなくて(笑)。
従来の書店のスタイルが厳しいなら、ほかのビジネスモデルを組み合わせるのはどうかなと思ったんです。
そこで考えたのが、僕たちの事業の柱の一つである「BASE」です。
ーー「BASE」?
大連:月額3,300円で、同じ本を読んで学んだことを実践していく「ラーニングサークル」や著名人による本のイベント、読書会などに参加することができる会員制コミュニティです。
ーー「ラーニングサークル」って気になりますね。どんなことをするんですか?
西村:ラーニングサークルは1冊の本をもとに3ヶ月くらいかけてその本の内容を実践していくんです。常時10くらいのサークルが稼働していて、「速読」や「世界史」、「ビジネス本の勉強会」「美文字」「PCのショートカットキーを覚える脱マウス」など、幅広いテーマの本から学んでいます。
▲現在、実践中の美文字について熱く語る西村さん
ーー「脱マウス」とかすごく気になります……。
石田:「脱マウス」、いいですよね(笑)。これは題材の本をもとに、メンバーに数ページずつ分担して読んでもらい、その内容をLINEなどを使って共有しながら交流します。オンラインのやりとりだけではなく、「AKUSHU」の店内にあるBASEメンバー専用のラウンジに集まって、本に書かれた内容を実際に試してみるんです。
ショートカットキーって使わないと覚えられないですしね。「早速仕事で使ったよ」とか「職場のみんなに教えたら尊敬の眼差しで見られた」など、いろんな声をもらっています。
▲BASEメンバーが使えるラウンジ。営業時間であれば自由に売り場の本を閲覧できる
ーーメンバーのなかには初めて会う人もいるんですよね。すぐに盛り上がるものですか?
西村:各サークルには「ファシリテーター」が1人いて、メンバーの発言を促したり、交流を盛り上げたりする役割を担っています。これまではAKUSHUのスタッフがファシリテーターをしながらサークルの運営をサポートしていたのですが、最近では「BASE」のメンバーがファシリテーターに挑戦することも増えてきました。
「普段の仕事でファシリテーターなんてやったことがないから良い機会になった!」「人に寄り添えるようになった」など、結構好評なんです。ファシリテーター同士でノウハウを共有しあう機会もつくっています。
ーー自分でコミュニティを運営するって勇気がいるけど、そういうスタンスだとハードルが低くなって面白そう! 本を買うところから学びにつながるところまで担う本屋さんってまずないですよね。
大連:そうなんですよ。本を読んだ知識を実際に体験することで、「わかるをできるにつなぐ」ことができると思っています。自分で選んだ本の内容ができるようになると、実践や共有したくなる。そうやって「主体的に生きる人を増やす」ことが、僕たちの一番やりたいことなんですよね。