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BambooCut竹内順平さんが梅干しから気づいた「曖昧」を楽しむ大切さ

「中途半端」をもっと楽しんでいい

ーー梅干しに関わってから気持ちの面で変化したことはありますか?

コロナ禍ってこともあって、僕は梅干しを通して失いたくないと思ったことがありました。今って科学的な根拠や色んなことを計算した上で答えを導きだせる時代じゃないですか。でも、昔の人ってもっと今よりも信じるしかなかったと思うんです。

ーー信じるですか。

例えば、昔はお腹を壊した時に今みたいにすぐに携帯で調べたりすることもできなかったので、「効くか分かんないけど、とりあえず梅干しを食べておこう」とか、何の根拠もないけど信じるしかなくて。その信じる対処に梅干しも入っていたと気づいた時に、今の時代って言い伝えだったり、相手を信じるとか、神様を信じるとか、何かを信じる機会が弱くなってきているんじゃないかなって感じて。

もっと曖昧でいいし、0か100というよりは中途半端なところで生きていくことをもっと楽しんでいいんだと思うんです。

ーーたしかに、梅干しをつくっても自分の思い通りの味にはならないですよね。でも、そこが面白いところで。

今年80歳になる僕の梅干し作りの師匠・乗松祥子さんは、50年くらい梅干しを漬けていても、満足に漬けられたのはたった4回ほどしかないんですって。「梅の状態と天気の状態と自分の体調、この3つが完璧に揃うのは、12年に1回あるかないか」と言っていて、深い世界に気付かされました。

毎年、梅があるからいいんじゃなくて、色んな条件が揃ってやっと満足のいく梅干しが漬けられる。そもそも、当たり前にあったり、実現できたりする感覚が間違いだと気づきました。

ーーそう思うと、本当に尊い文化です。

梅干しって北海道から沖縄まで作り方があって、みんな作り方もバラバラで。でも、ずっと継承されている文化だから「この人の作り方間違えている」と思ったこともなくて。梅干しもひとつとして同じものがないように、みんな違うけど、みんな正解なんです。

そんなことを学んだお陰か、人から全然違う話を聞いても「それも正解なんだな」って否定しにくくなりました。だから僕が今話していることも正解かは分からないですよ(笑)

ーー最後に、梅干しを通してお客さまに伝えたいことはありますか?

漬け方の微妙なところが丁寧だったり、ひとつの種類で食べ比べが楽しめるのって日本人ならではの豊かな文化だと思うんです。立ち喰い梅干し屋ではお風呂に浸かった時の「はあ〜」っていう安心した時のため息の感覚を梅干しとお茶で感じてもらって、「日本人でよかった」と思ってもらえると最高に嬉しいです。

編集部のここが「#たしかに」

冷蔵庫も電気もない時代から食べられていた「梅干し」。味覚だけではない新たな魅力を知ることで、梅干しの見方が180度変わりました。

竹内さんが梅干しに関わったことで、「みんな違うけど、みんな正解」のように考えるようになったこと、意外ではなくすごく納得です。

「もっと曖昧でいいし、0か100というよりは中途半端なところで生きていくことをもっと楽しんでいいんだと思うんです」 という言葉のように、過程の中にある曖昧さを楽しもうとする所が、日本人の感性だと思いました。

まだまだ我慢することが多い生活の中で、梅干しも人生も「いい塩梅」を見つけることが毎日を楽しく暮らすコツかもしれません。

取材中、梅干しをいただいた瞬間、梅干しが漬かっていくようにじんわりと心に染みて、いつの間にか疲れも吹っ飛んでいました。梅干しは身体の健康だけではなく、心の健康にも効くんですね!

竹内さん、ありがとうございました! これからも日本の美味しい梅干しをどんどん発掘して行ってください〜!

■立ち喰い梅干し屋

住所:東京都墨田区押上1丁目1-2 東京ソラマチ4階
TEL:03-5809-7890
営業時間:10~21時
定休日:年中無休
交通:東武鉄道とうきょうスカイツリー駅から徒歩1分
公式サイト

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。お越しの際は事前にHPでご確認いただくことをおすすめします。

取材・執筆:吉野舞 編集・撮影:#たしかに編集部

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