人と話すのは苦手。だけど「関心を持ってもらいたい」という思いを抱えていた
シバタさんはお父さまが工事業者だったこともあり、小さい頃から自宅に家具や素材が沢山あったそうですね。小さい頃の経験が今のモノづくりへとつながっているのでしょうか?
モノづくりに興味を持ったのは完全に父の影響ですね。父は昔ながらの職人だったので、先進的な工具の使い方よりもモノづくりの基礎的な知識を教えてくれました。
小中学生の頃は自分の関心が同世代の人たちとズレていたので、同級生と話が合わなかったんです。だけど、図工の時間に僕が何か作ると、趣味が合わないと思っていた友達まで笑ってくれて。その時、モノづくりが人とのコミニュケーションの手段になるんだと気づき、一気にのめり込んでいきました。
大学時代でも変わらずモノづくりを続けたのでしょうか?
そんなこともなくて(笑)。大学時代は今とは違い、もっと社会問題を解決するための真面目なものを考えていました。学業以外には、興味のある企業の社長に「ちょっと話せませんか?」ってTwitterや製品連絡フォームから直接アポを取って、話を聞きに行っていました。意外と会ってくれる社長が多かったんですよ。
すごい行動力! 学生時代の真面目な作風から今のユニークな作風へと変わったきっかけは何だったのですか?
真面目なものを作っている人が多い中で、あえて自分がやらなくてもいいなと思ったんです。それに私は根底に「人と違うことをやりたい」という思いがあって、「人と話すのは苦手だけど、関心を持ってもらいたい」というジレンマを抱えていたんですよね(笑)。そうすると面白いものを突き詰めていく方向性になりました。
最初の発明品は、どんな物でもゴージャスに登場させる箱『デルモンテ』(2017年)ですよね。これはどのようにして生まれたのですか?
『デルモンテ』は、社会人になってから作ったものです。新卒で就職した会社にはアーティストが多く在籍していて、「こんな自由にモノづくりをしていいんだ!」ってとても刺激を受けたんですよ。
それから自分でも発明品を作り始めて、試しに『デルモンテ』をSNSで投稿すると、周囲の反応がすごくて。この作品でバズったのに味を占めて作風が徐々に固まっていきました。
どんな物でもゴージャスに登場させる箱”デルモンテ”を製作しました。 MFT2017で展示します。
シバタさんの発明品は、紹介動画のエンターテイメント性が高いことも特徴です。SNSで発明品を投稿する前に、強く意識した部分はあるのでしょうか?
小さい頃からテレビショッピング番組を見るのが好きで、ずっと「こんな演出で自分の作品を表現したい!」と思っていました。
それで『全自動割り箸割り機』(2019年)をCMっぽい感じで紹介してみると、それが違和感なくハマったんです。普通の投稿もできたんですけど、当時は自分の発明品に自信がなかったので、ジョークっぽい動画にしたかったのかもしれません。
全自動割り箸割り機 Fully automatic chopsticks splitter
メディアに出ているシバタさんを見ていると「発明品に自信がない」とは思いませんでした……。
シバタさん:自分は独学でモノづくりを始めたので、学校などでモノづくり教育を受けた人と比べると知識が少なかったんです。それに「独学で作った発明品を世の中に出していいのだろうか?」って悩んでいた時期もありました。
そんな不安をカバーするかのように、誰もが笑ってしまう動画で作品を紹介すると、自信を持って発表することができました。ただ発明品と同じくらい自分の「顔芸」に注目が集まったのは予想外でしたね(笑)。