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【後編】科学技術は人々を幸福にす​​る?幸福学・前野教授と考える、テクノロジーとの程よい距離感

AIは神様にも、兵器にもなり得る

たしかに編集部テクノロジーにおいては、ChatGPTが世界を賑わせています。テクノロジー研究出身の前野教授は、AIをどのように捉えていますか。

前野さん入試やレポートをChatGPTが代行する問題が取り沙汰されていますが、新たなテクノロジーを禁止する方向性が教育の目指すべき道だとは思えません。現在はイノベーションの過渡期です。禁止は本質的な解決策にならないでしょう。2016年にはGoogleの「AlphaGo」が囲碁でプロ棋士に勝利したことが話題になりました。それからわずか10年も経たずに高度な生成AIが生まれたわけです。今後の進化は計りしれません。考え直すべきなのは、むしろ教育そのもののありかただと思います。

たしかに編集部AIの時代、教育には何が求められるのでしょうか。

前野さん医師国家試験、司法試験、東大の入試も、ChatGPTが解けるようになることは目に見えています。AIに代用できないのは個性や感性、創造性だといわれますが、それも徐々に人間に追いついていくでしょう。少なくとも、知識詰め込み型の教育は無意味で、より本質的な学びにシフトしていくべきです。

前野さん私は幸福学研究の一環として、多変量解析によって人の幸せに直結する「4つの因子」を求めました。主体的に努力を続ける「やってみよう因子」、多様なつながりや利他的な精神である「ありがとう因子」、前向きかつ楽観的な「なんとかなる因子」、本当の自分らしさを追求する「ありのままに因子」です。例えば「ありがとう因子」が強い人間がAIを設計したとします。そのAIは人間の1万倍賢くなっても、利他的でありつづけるでしょう。差別も中傷もしない神様のような存在です。もしかすると、人間がAIを、昔のご先祖さまのように大切に崇めたてる日が来るのかもしれません。もしもそうなっても、実はそれ自体には問題はなく、むしろ人々は幸せになるでしょう。

たしかに編集部そうなると、幸せではない人がAIを設計すると、話が変わってくるのでしょうか。

前野さん殺戮兵器にAIを搭載し、戦争に使用すれば、簡単に他国を侵略できるようになります。かつての核兵器のように、開発競争を制した国が勝利してしまう状況も想定すべきでしょう。また、巧妙にAIを活用し、陰謀論をSNSに浸透させれば、選挙において容易に政権を獲得できる可能性もあります。“ありがたいご先祖さま”と“人類を破滅させる兵器”。AIがどちらに進むかを予測はできません。技術進化とはそういうことです。

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