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先生はブラック?それだけじゃない。絵本『せんせいって』に込めた、それでもやっぱり先生の仕事が好きな理由

大変さばかり注目されてしまう今だからこそ、伝えたい。絵本『せんせいって』に込めた想い

たしかに編集部絵本『せんせいって』のストーリーをつくるうえで大切にしたのはどんなところですか?

松下さん子どもが読む絵本だからといって、希望や明るいイメージだけを表現するのはやめようと思いました。先生という仕事の楽しい部分はもちろん、大変な部分も包み隠さずに伝えたいと考えたんです。

松下さんあとは、先生と子どもたちの会話形式にして、「働き蜂みたいだね」とか「カピバラみたいにゆっくりみんなと過ごしたい」といった動物にたとえた表現を入れて、親しみやすさにもこだわりました。

たしかに編集部同僚の先生や児童たちは松下先生が絵本をつくったことを知ってるのですか?

松下さん周囲には一切、伝えていませんでした。自分の気持ちを赤裸々に表現しているので、ちょっと恥ずかしくて(笑)。ただ、以前6年生を担任したときは、子どもたちに将来の仕事を考えてもらうキャリア教育の一環で『せんせいって』をクラスで読み聞かせしました。

たしかに編集部児童たちにとって、先生はもっとも身近な仕事の1つですもんね。子どもたちはどんな反応でしたか?

松下さん「先生になりたい」って言ってくれる子もいれば、「大変なのは学校の先生だけじゃないよ」と現実的なことを言う子も。いずれにしても、社会で働くことの大変さを感じてもらう1つのきっかけになったのかなと思います。保護者からも、「先生はいつもこんなに考えてくれているんですね」といった好意的な反応があってうれしかったです。

たしかに編集部教員の方からはどんな意見が?

松下さん同職の方は当事者である分、SNSなどでは「やりがい搾取だ」「うちの学校ではこんな余裕はない」など、厳しい意見もありました。普段子どもたちには「陰口は言ってはダメだよ」と伝えているのに、大人がこういう発信をするのは悲しいですよね。

たしかに編集部教員は労働時間も長く、手当が十分に出ないなどの現状があって、働き方改革の必要性が叫ばれていますよね。

松下さん勤務時間と実態が合っていないんですよね。勤務開始が8時半なのに子どもたちは8時10分から登校してきますし、休憩時間に設定されている時間帯に授業や会議が重なっていますし……。

たしかに編集部全然休憩を取る時間がないですね。授業の準備や子どもたちのフォローもしないといけないし、本当に大変だと思います。

松下さん金曜日の夕方に保護者から電話があって取れなかったときなどは、週末の間もずっと「何かあったのかな」と考えてしまいますね。

松下さんそういう意味でも、教員の仕事は「子どものために何ができるか」を考える仕事なので、「何時から何時まで」と時間で割り切ることができない仕事なんです。

たしかに編集部世間ではそういう教員の仕事のネガティブな部分が前面に伝えられてる印象があります。

松下さんしんどい部分ばかりがSNSやニュースで伝えられてる気がしますね。教員志望の学生さんも身構えてしまいますし、夢を叶えて教員になっても現実に打ちのめされてしまうケースも……。

たしかに編集部たしかに、「先生の仕事って楽しいよ」と伝えるメディアが少ないのかもしれません。

松下さんだからこそ、私自身は「教壇に立つことはこんなに楽しいんだよ」「先生の仕事ってやりがいがあるよ」ってことをもっと伝えていきたい気持ちがあるんです。

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