お茶のことを知るにつれて感じた違和感
ーー日本茶でこういう尖ったイベントは珍しいですね。面白そう!
でも、お茶のことを深く知っていくと、ますます日本茶のモヤモヤした部分が見えるようになってきたんです。イケてないとか、楽しみ方を提案できてないとかいろいろあるんですが、何よりも「●●さんがこのように言ってるから」「お店で薦められたから」ということを信じ切っていて、お茶の良さを「言語化」できていないことにすごく違和感がありました。
ーーたしかに、お茶は情緒的な言葉で語られることが多いですよね。
当時はマーケティングの世界にいたこともあり、余計に気になったのかもしれません(笑)。
ちょうどその頃、仕事では事業開発を手がけていたこともあり、コンシューマー系の事業会社で働きたいと思っていました。どこかの会社に入って自分のやりたいことを実現するにはすごく時間がかかる。でも、家業ならスピード感をもってできるなと思い、はじめてお茶を仕事にしようと思ったんです。
会社を辞めて、まずはお茶のことを知ろうと、静岡にある日本茶の研究所「農研機構 金谷茶業研究拠点」で約1年間勉強しました。晴耕雨読のような毎日で、茶畑で作業しお茶に触れることで、多くの経験と知識を得ることができました。その中で、経験や疑問や発見をできる限り言語化しようと努めたのは、とても良い経験になったと思います。
ーーお茶のことをロジカルに考えている人は少なそうですよね。
まだまだ少ないと思います。でも、共感してくださる人も増えているんですよ。 Twitterでこの図を載せたら結構な反響があって、これまでなんとなくお茶を淹れていることにモヤモヤしていた人が多かったんだろうなと思いました。
▲お茶の成分をわかりやすく図解したもの
ーーもっと美味しく飲む方法があるんじゃないかなと思っている人は多いと思います。淹れ方のコツなどあるのでしょうか?
お茶の味は渋み・甘み・旨みの3つがあって、お湯の温度や抽出する時間によって変化します。
ポイントを理解すれば、気分や好みに応じた淹れ方をすることができます。例えば、70度くらいのお湯を注ぐと、旨味と渋みのバランスが取れたお茶を楽しむことができます。寒いときに熱いお茶を飲みたいのであれば、気持ち多めの茶葉を使い、熱湯を注いでから15秒くらい待ってから飲むと、ホッとする美味しいお茶を楽しめると思いますよ。
ーー私、今まで何分も経ってから飲んでました……。
時間が経つと渋み成分が出てくるんです。抽出時間を短くすることで、今よりずっと美味しく飲めると思います。
ーーお茶って「茶道」のイメージもあるので、こだわるとすごくマニアックな世界のような気がしていました。だから、あえて足を踏み入れようとしなかったのかも(笑)。こうやってわかりやすく説明してもらえると、気軽に楽しめそうです。
あまり難しく考える必要はないんです。例えば和菓子だけじゃなくて洋菓子に合わせてもいいですし、僕が開催するイベントではお気に入りのコンビニスイーツに合わせてお茶を楽しんでもらうこともあるんですよ。
お茶の感覚的な部分とロジカルな部分を丁寧に伝えていくことで、お茶にもっと興味を持ってもらえるんじゃないかと思っています。