小さな幸せと、小さな不幸せを集めていく
ーーお話を聞いていると、お二人はお互いや自分自身と向き合って、それぞれの性質を受け入れることができているのだと感じます。自分を容認して好きになるにはどうしたらいいでしょうか。
ちっち 方法はいっぱいあるけど、わたしは小さな幸せを数えるようにしてる。「花が咲いているな」とか「今日雨が降ってカエル喜んでるだろうな」っていう、そういう小さいことでいいんです。
生きづらい時とか自分を嫌いな時って、世界は厳しいものに見える。だから世界のポジティブなところに目を向けるようにトレーニングして、小さな幸せを積み重ねていくほどに自分を好きになれていると思います。世界が素敵に見えたら、そんな世界に住んでいる自分は素晴らしいものだって思えるようになる。
ーーたしかに。少しずつトレーニングしていけばいいと思うと気持ちが楽になる気がします。けんごさんはどうですか?
けんご 俺はたぶん、今までずっと自分のこと嫌いじゃなかったんですよね。大好きではないけど、別に好きだった。
ちっち 出会った頃はけんごさん、正直かっこつけだった。バンドやってたのもあって、斜に構えていたところがあった。でもどんどんピュアになっていったよね。
けんご そうそうそう(笑)。決めつけがなくなって、今はいろんなものにありがたいって感謝できていることが、自分を好きでいることに繋がっている気がします。
ちっち ピュアになると、しょうもないことにも感謝ができるし、どんな人も見下さずに「かっこいい」って思えるようになるんですよね。
ーーそうなりたいと思いつつも、ハードルが高いような気がして。他者に対してそう思えるようになるには、具体的にどうしたらいいと思いますか……?
ちっち あ、そうだ。わたしが一番人生で大切にしているのが「全肯定」なんですよ。
ーー全肯定。
ちっち 例えば、正直「コイツ!」って思う人がいたとしても、その人の一面しか見てないわけじゃないですか。その人自身をまるっとダメなやつって思うのはもったいないし、尊重できていないと思う。みんなそれぞれ違う人生を歩んでいるわけだから。
自分が正しいって思わず、その人を尊重して、その人の人生から学んだ方が自分が豊かだと思うんですよね。それは、わたしとけんごさんとの間でも同じ。
けんご 「なんだ?」って心が反応するのは、自分では想定できない、自分と違う考えや価値観に触れていることが多いもんね。
ちっち そうそう、その時は自分の善悪を手放す。自分の善悪がどんどんなくなっていくと自分も楽になるし、むしろ心が反応したらラッキーって思うようにするというか。しめしめって。
人を肯定するのが癖になると、自分のことも当たり前に肯定できるようになるしね。世界とか他人を通して自分を好きになるというか。
ーー人を肯定することで、自分をも肯定できるようになる。刺さります……。
ちっち 自分を好きになるのも、全肯定に尽きると思います。わたしも病気になったから今の自分があるし。ポジティブもネガティブも、好きも嫌いも全部まるっと受け入れること。
けんごさんとわたしは、ポジティブとネガティブの中間を目指してるって言ったけれど、やっぱりどっちも必要なんですよ。わたし、THE BLUE HEARTSの音楽に救われてきたんですけど、その中で『情熱の薔薇』の歌詞の意味がようやくわかったんです。
ーー何度もカバーされたり、CMでも流れたりする有名な曲ですよね。
ちっち そうそう。2番の歌詞に「なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せ なるべくいっぱい集めよう 心のずっと奥の方」ってあるんです。幸せだけじゃなく、不幸せも集める。どちらもあるから、ちょうど真ん中にある本当の幸せに気づける。
だから、わたしが小さな幸せを探すのと同時に、「けんごさんは『小さな不幸せ』担当なんだよ」って言って、二人で一緒にその真ん中を模索しているんです。