
「好きを仕事に!」こそ腹黒く。発酵デザイナー・小倉ヒラクさんの戦略とは?#たしかに

好きを仕事に、そんな働き方に憧れることはありませんか。小倉ヒラクさんは、発酵好きが高じて「発酵デザイナー」になり、様々なワークショップや展覧会、発酵デパートメントの運営など、多方面で活躍されている方です。まさに「好きを仕事に」した小倉さんに、好きなことを仕事にするとはどういうことなのか、お話を伺いました。
今回は、オンラインでの取材です。開始は午前11時ころ。小倉さんは、オープン前の発酵デパートメント店内からつないでくれました。てきぱきと明るく準備するスタッフさんの声が聞こえてくる中、取材がはじまります。

発酵を仕事にすべきか、5年なやんだ
ーーこんにちは! 今日は楽しみにしてきました。
いやー、おくれてごめんなさい。車が、渋滞につかまっちゃって。いつも右折でつかまる交差点があるんですけど、ここ2ヶ月はスイスイ行けたんです。こんなに時間がかかったの、ひさしぶりですよ。人が、街に戻ってきたのを感じます。

ーー小倉さんが発酵デザイナーになられるまでの経緯、簡単にうかがってもいいでしょうか??
大学を出て、デザイン会社でデザイナーとして働いたのちに独立しました。微生物や発酵が好きになったのは、全国の蔵に行き、地方の醸造家たちと一緒に遊んだり、仕事したりするようになってからです。でも、すぐに「発酵デザイナーになるぞ!」と思ったわけではなくて。発酵好きになってからも5年間くらい、どうしようかとうじうじ悩んでいましたね。
——小倉さんにもそんな時期が! すぐに決められたのかと思っていました。
そうなんです。その頃、業界の最前線で活躍していた同世代のデザイナーたちと仲良くなって。一緒に仕事したり、いろいろ話したりしていくうちに、「こいつらには勝てねえ」って思ったんです。彼らは本当にデザインが好きだから、気持ちの入ったいいデザインができる。自分の仕事を突き詰めて、今や世界的なデザイナーになった人もいます。じゃあ自分はどうだったかというと、デザインは好きだったけど、彼らほどの思い入れはなかった。彼らを見て、僕はデザインで食ってくことはできても、意義をもって取り組むことはできないと思いました。
——なるほど。デザインにはのめりこめないと気づいたんですね。
僕はもともと、発酵を仕事にしようと積極的に準備したり、セルフブランディングしていったわけじゃなくて、趣味に留めておくつもりでした。だから5年も悩んだんだと思います。でも結局は、自分が想像していたよりもずっと発酵や微生物にハマってしまって、仕事にせざるを得なくなった感じ(笑)。好きなことを仕事にするって、意外とそういうものなのかもしれませんね。
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