また自由に出かけられない日々がきたらどうする?精神科医・名越康文先生に聞く「外出自粛時のこころの健康の保ち方」

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2020.06.29.Mon.
#たしかに編集部

新型コロナウイルスの影響で外出自粛となり、街に出て友人と食事をしたり、楽しみにしていたイベントが中止になったりと、心の拠りどころとも言える「お出かけ」がなくなってしまったことに気持ちが落ち込んだ方もいたのではないでしょうか。家で過ごす中で、やりたかったことがなぜか手につかない、暗いニュースばかり見てしまう、立てた予定をこなせずに、「私はなんてダメなんだ!」と自分を責めてしまうこともあったのでは。 

そこで今回は、インタビュアーとしてフリーライターの社領エミさんをお招きして、精神科医の名越康文先生に「外出自粛時のこころの健康の保ち方」についてたくさん質問をぶつけていただきました!

「自粛生活でやることリスト」の最後には、「あくまで仮です」のひとことを

名越 僕、自粛期間で辛かったことが何もなかったから、まずそれを教えてほしい。聞かないとわからへんのよ。 

社領 え、本当ですか? 外出自粛の要請が出てから、今まで対面でやっていたミーティングがオンラインになったり、そもそも出社すらなかったりと、生活がガラッと変わりました。そんな中で、テレワークが性に合っていて快適な人もいれば、自由に出かけられない、友達と遊べないとかで気持ちが落ち込んだ人もいて。そもそも、どうしてそれで気持ちが暗くなってしまうんでしょうか? 

名越 まず、孤食に慣れてないっていうのがひとつのポイントなのかな。 

社領 ひとりでご飯を食べること? 

名越 うん。僕みたいに普段一人でご飯を食べてる人は、食事を通して人からエネルギーをもらうサイクルの中に生きてない。だから孤食でも平気なのよ。でももしかしたら、みんなでご飯を食べる晩餐形式に慣れてる人はしんどいのかもね。 

社領 そうかもしれないです。私は夫と一緒に過ごしてたから平常心を保っていられたけど、一人だったら本当に寂しかっただろうなって思います。 

名越 自分のすることに没入感がないのも寂しい原因かもしれない。この際、音楽とか物語に没入する集中力を養ったらどうやろ。

社領 集中力を養うためには、どんなことに気を付けるのがいいですか?

名越 普段から、「よし楽しむぞ」と覚悟したうえで、聞く、読む、見るという習慣をつけることですね。 

社領 なるほど。その集中力で得られる没入感って、音楽をきいてライブ会場にいる気持ちになったりするような感覚ですか? 

名越 そう。たとえば僕、いま漫画の『キングダム』を読んでるんやけど、何万という武将と一緒にいる気分になれて全然寂しくないんですよ! コンサートの映像を見ても、僕はバンド活動をしているから、本当に会場にいるほどの高揚感があるんです。 

社領 そこまで入り込めたら確かに全く寂しくなさそう! ただ、没頭以前に「無気力」になっている人も多いと思います。休みに入ったらこの本を読もうとか、これを作ろうとか思っていたものが、新型コロナの影響で時間が作れるようになっても、「なにがやりたかったんだっけ」と思い出せなくなったり、気分がのらなくて着手できなくなったりする人もいたと聞いていて。これはどうしてなんでしょうか? 

名越 それね、直球で言うと、「無理」なんですよ。 

社領 えっ!? 無理なんですか!?

名越 うん。だって計画した時と自粛期間の今とでは状況が違うでしょう。だから、そもそもその予定をこなそうとするのは無理なんです。予定は未定の、頻繁に変わる状況の中で僕たちは生きているから。 

社領 なるほど。状況が変われば気分も変わりますもんね。当然なのに、頭からすっぽり抜けてました。 

名越 緊急事態宣言が発令されたとき、真面目な人は「自粛生活でやることリスト」みたいなものを作ったかもしれないけど、そういうのには「あくまで仮です」って最後のほうに入れとかなあかんね。 

社領 「仮です」と。 

名越 うん。たとえばリストに10項目があって、全部にやる気が起こらない。なら、もう思い切って「いい夢を見る」でも「温水プールに行く」でも、なんでもいいから今一番気が向くことで11項目めを作ってしまえばいいんです。 

社領 毎日自分のやりたいことを考える生活は気持ちも明るくなりそう……! 

名越 そうやって考えるのが、いい頭のエクササイズにもなる。しかも、その日一日で自分が一番やる気の起こることが、能力も発揮できるし、効率も良くなるから一番パフォーマンスがいいんですよ。

「予定していた自分」よりも良い自分になるための考え方

名越 ただ、予定を変更して新しいことをやった時に、「計画通りにできなかったのは私が怠けてるからだ」って自分をバッシングしないでほしいねん。 

社領 ヤバい! 私もそう思ってました。 

名越 やることリストに以前書いていたことよりも、今日の自分を最高の状態にしてくれる素敵なことをやったんだって思わなあかんよ。「もしかしたら、計画してたことをやるよりもずっとテンションあがってるかも?」くらいに思ったほうが絶対良い。これすらできない私はダメなんだって方向に行くのはもったいない。 

社領 なるほど。予定をこなせないのは自分の気持ちが落ち込んでるからだって思ってたんですけど、そうじゃないと。 

名越 うん。それは、はじめから自己評価が低いのもあるよね。私はろくなことできない、立てた予定をこなせない人なんだってどっかで信じてるのかもしれない。 

社領 自分はダメなんだとか、人と会わずには過ごせないんだって思い込んでた気がします……。 

名越 そういうふうに、たった一日とかの短い間からだがだるいだけで、「私は一人で過ごすのが苦手なんだ」みたいに決めつけたら、「一人で過ごせない自分」から逃げられないやん。言葉はものすごい力を持っているから。 

社領 うんうん、たしかに。 

名越 「私はこんな人間なんだ」というのは危ないから避けたほうがいい。もっと言うと、「私はやれる人間だ」も避けてくれていい。それはどっかで自分を脅迫することに繋がるねん。「証明せなあかん」みたいなプレッシャーがかかるからね。ただやれることに取り組んだらええよ。

朝から運動しないのは、3万円の化粧水を捨てているようなもの!

社領 自粛期間だけでなく、新学期や転職のような生きていく中での変化って、ワクワクするけどなんだか気持ちが削られたり、対応するのが大変だったりと、感情が疲弊しがちです。環境が変わったときに気持ちが不安定になるのには、何かメカニズムがあったりするんですか? 

名越 個人差が大きいし、おそらく複雑な要因が絡まっているので明確な説明はできません。でも、わかっている部分でいうならば、自律神経のバランスの崩れが一つの原因です。環境が変わったことで起きがちな対人関係のストレスで、副交感神経のパワーが落ちてきてるわけ。 

社領 副交感神経って、リラックスとかよく寝るための神経でしたっけ? 

名越 うん。そのパワーが落ちるとイライラしがちになるし、集中力が落ちてきて、明るい気持ちになれなくなる。でも副交感神経はちゃんと復活させることができるねん。それは単純な話、「運動すること」やね。 

社領 えー! 私、全然運動してないです! 

名越 落ち込んだ人って、気持ちが暗いのには何か高尚で、もっと根本的な理由があると考えがちなのよ。そんなこと考える前に、窓を開けて深呼吸して外を30分くらい歩き回って来てください。 

社領 30分でだいぶ変わるんですか? 

名越 ぜんぜん変わる。 

社領 うわ~変わるんだ! 自粛中、運動不足のまま気持ちが沈むな、なんでだろって思ってました(笑)。やっぱり運動かぁ~!

名越 その運動は午前中が一番大事やねん。午前中にカーテンを開けて日の光を浴びると、セロトニンが出始めるわけ。 

社領 セロトニン? 

名越 幸せホルモンって言われてるやつやな。だっさい言い方やなって思ってしまうけどわかりやすいわ(笑)。 

社領 (笑)。 

名越 セロトニンは、運動によって分泌量が増えるんよ。さらに、運動後14時間でセロトニンからメラトニンって物質が作られる。メラトニンは別名「自然の睡眠薬」と言われてるぐらい睡眠によくてね。つまり、例えば朝の8時に運動したら22時にはメラトニンが作られて、寝付きよくぐっすり眠れる。

社領 運動した日の寝つきが良いのは、セロトニンとメラトニンのおかげだったのか! 

名越 ぐっすり眠れると、からだを修復するホルモン、またの名をアンチエイジングホルモンって言われているホルモンが出やすい。結果、からだの細胞が修復されるし、副交感神経が活発に働くことで毛細血管が開くから、からだの隅々まで栄養とかホルモンが届くわけ。 

社領 へぇ~! 改めて聞くと睡眠ってやっぱりすごい! 

名越 だから、その状態で朝起きると、からだの修復がされていて若返っているし、気分はいいしで良いこと尽くめやねん。スカッと起きれるから「さあ今日も光浴びて運動しよか」ってなるし良い循環が起こるわけやね。 

社領 最近、化粧品とかでアンチエイジングしようとしていたんですけど、それってなんかめちゃくちゃ生ぬるいですね。 

名越 朝起きて朝食を摂らず、運動もしないのは、朝から3万円もするような化粧水をシンクに捨てているようなものやから。 

社領 うわー!! めっちゃ捨ててた!! 

名越 ソーシャルディスタンスを保った状態で外にいることはOKなんやから、これからは早起きして、まだ涼しいうちに歩いて、早く寝てみてください。ほな、気持ちもすごい安定しますよ。 

社領 ちょっとやってみます。いや、やれるのかな。やってみますって言っていつもできないからなぁ……。でもやりたい!! 

名越 ふふふ(笑) 人を避けて歩いてると、ここにこんなちっちゃい公園があったんやとか、ここの路地のボスはこの三毛猫やなとか、新しい素敵なことに気付くものですよ。こうやって聞くと「楽しそう!」って思うでしょ。

いつかまた来るかもしれない外出自粛に備えて、「自分には価値がある」と思おう

社領 自粛中、気が付くと暗いニュースを読んで気持ちが沈む、なんてことを繰り返してしまう人がいたと聞きました。また同じような状態にならないためには、何に気を付ければいいでしょうか? 

名越 まずは情報を読んだ後、しばらく置いておくことやね。それに、「発信者が感情的になってる情報」に関してはなるべく読まないことが大事。個人的に僕は、誰であろうと個人の経験談はなるべく読まないようにしていました。それを普遍化してしまうととても危険やから。 

社領 感情的な情報に限ってめちゃくちゃ拡散されていたりしますよね。私もそういうのでパニックになって、自分の気持ちが悪い方向に行ってたこと、あった気がする……。 

名越 感情的な情報を読んで落ち込みがちな人は、自分がそういう刺激の強いものを求めてしまう性分なんだってことを根本で理解しておく必要があるね。野次馬根性があるなとか、人の感情に弱いなとか、そういうところに気付くこと。自分の性分に振り回されないよう今のうちに鍛えておかないと、第二波の時に必ず同じパニックに陥ってしまうと思います。 

社領 陥りたくないです……! どうしたらいいですか? 

名越 自分はもっと価値ある人間だと思ってほしいね。自分には価値があって、ニュースひとつでずっと落ち込んでいるような人間じゃないと、まずは自分に言い聞かせてください。 

社領 最近自己肯定感落ち気味だったから泣きそうです先生……! 

名越 自分は選ぶ側の人間なんやと思って、情報を目の前にしたときにちゃんとそれを「読まない」って選択もできるようにならないと。不安を煽るような記事をどうしても読んじゃうって、つまり自分で情報を選べてないからね。受動的になって不安から読まされてるわけだから。 

社領 選んで読んでるつもりだったのに、たしかに全く選べてないですね。 

名越 あとは感情的な文章とかは、声に出して読んだりすると意外と「ここなんか変なこと言ってるやん」って笑えたりします。 

社領 鵜呑みにして真に受けるんじゃなくて、自分なりの視点で読む、とかでしょうか。 

名越 批判的に読んでいいと思います。あとは、自分の価値を認めて、自分の軸をしっかり持って、地に足をつけて1日1日過ごしていけば大丈夫です。自分が本当に何をしたいのか考えて、毎日ワクワクしながら自分を堪能できるとええね。あとは早寝早起き運動な。 

社領 ほんまに泣きそう……。今回名越先生にお話聞けて良かったです! ありがとうございました!

 

編集部のここが「#たしかに」

「私はきっと予定をこなせないんだ」「私は一人で過ごすのが苦手なんだ」と自分をあらかじめ決めつけている、と聞いて「たしかに……!」と思いました。「計画よりも今日やりたいことをやる!私はせっかくの一人時間を自由に生きるんだ!」と状況を明るく捉えることで、ストレスのたまりやすい外出自粛の生活でも、毎日を楽しく過ごせそうです。 

もしかしたら来てしまうかもしれない再びの外出自粛に備え、早起き早起き運動を頑張っていきましょう!

社領さん、名越さん、ありがとうございました!

 

社領エミさんTwitterhttps://twitter.com/emicha4649

精神科医・名越康文の研究室http://nakoshiyasufumi.net/

 

取材:社領エミ 執筆:矢野千愛 編集:#たしかに編集部

たしかに