食でワクワクを届けるために。企業の枠を超えて、食の未来を考える
まずは、「Food Up Island」を設立したきっかけを教えてください。
「Food Up Island」は2019年に設立し、現在は食品メーカー7社が参画する食の共創コミュニティです。
参画企業はライバル同士でもあると思いますが、なぜ一緒にやることに?
設立する少し前、私が森永製菓で新規事業を担当していたときに、さまざまな食品メーカーの方と交流する機会がありました。その中で、どの企業も同じような悩みを抱えていることに気がつきました。
未来に向かって国内経済が伸びているときは、おいしい食を消費者のみなさんにお届けするために各社が良きライバルとして切磋琢磨してきました。しかし、国内人口が減りはじめ、地球が悲鳴をあげているような時代になり、「このままのスタイルではやっていけない」ということを、みなさん考えていたんです。
各社で課題感が一致していたんですね。
それなら、「共通の課題感を持ったもの同士が集まって、力を合わせて未来を考えることが必要だよね」とみんなで話し合って、メーカーの垣根を越えた「食の国連」のような団体をつくることになったんです。
具体的にはどのような課題意識があったのですか?
日本の食は世界から賞賛されていますよね。本当においしいし、繊細でいろいろな工夫がされていて、しかも安い。それって、企業努力の賜なんですよね。
でも、良いものを1円でも安く届けようとした結果として、みんなが疲弊してしまっている。人材不足、物価上昇といった課題に直面し、持続することが難しくなってきました。このままでは、日本の食文化や培ってきた高い技術が失われてしまうかもしれません。
消費者は「値段が上がると困る」と言いますが、企業にとっては難しい問題ですよね。
サステナブルであるために何をすべきか。このままコストダウンだけをしていていいのか。価値をどう生み出していくのか。各企業の中でこういった思いを抱いていたメンバーが「Food Up Island」に集まっています。
「Food Up Island」のサイトを見ると、「ワクワクする」「笑顔」といった言葉が印象的です。活動する中で大切にしていることを教えてください。
会社対会社の話になると、やはりできないこともたくさんあります。でも、それでは今までのやり方と変わりません。そこで「Food Up Island」で大切にしているのは、参加するメンバー自身の気持ちです。食の未来を豊かにするために個人としてやりたいことを出し合って、分科会をつくって具体的な活動を進めています。
個人がやりたいテーマを追求する。すごく、面白そうですね!
企業は品質や安全性の担保、サステナブルであるかなど、向き合わなければいけないことがたくさんあります。しかし、食品メーカーに勤めている社員は、「おいしい食を届けて、みんなに笑顔になってもらいたい」と考えている人が本当に多いんです。食は楽しいもの。それを多くの方に伝えるためにも私たち自身が楽しまないと、という考えなんです。