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作り手と消費者、みんなで食の未来を考える。食の共創コミュニティ「Food Up Island」が生み出す新しい価値

大事なのは相互理解。対話によって乗り越えられる課題もある

たしかに編集部近年は食の領域でも分断が起きているように感じます。食に関わるお一人として、どのように現状を捉えていますか?

金丸さんさきほど紹介したケースのように、一つひとつの商品の価値を知ろうとする消費者が増えていることは嬉しく思います。しかし、個人の職人さんが丹精込めてつくった商品と比べると、量産化されたコモディティ商品は価値を低く見られてしまうことがあると感じています。実際は、メーカーが何百回も試作を重ねて作ったものなのに、です。

たしかに編集部そのことをわざわざ消費者に伝えませんよね。

金丸さんでも、どんな商品も作り手の愛情が込められていて、膨大な試作を経て世の中に出ているということを多くの方に知ってもらいたいという気持ちがあります。いいものを1円でも安くするために、どの企業も並々ならぬ努力をしています。コモディティ商品であっても、つくっているのは人。だからこそ、作り手の工夫や温かみをもっと伝えていきたいと思っています。

そうすることで、ものを買うときや食べるとき、捨てるときの意識も変わってくるのではないでしょうか。

たしかに編集部ビーガンやベジタリアンなどの志向や、食品添加物、大量廃棄、環境問題への意識などさまざまな側面で価値観の多様化が進んでいます。時に過激な議論も展開されますが、どのように見ていますか?

金丸さん大事なのはきちんと話し合って、相互理解することだと思います。

以前、「Food Up Island」の分科会でアップサイクル商品をつくる活動を行いました。その中で、若い方から「プラスチックは環境に良くないのに、企業はなぜやめないのか?」と質問されたんです。

たしかに編集部プラスチック=悪と思い込んでいる……。

金丸さんもし、プラスチックを一切使わなかった場合、逆にフードロスが深刻になる可能性もあります。商品が日持ちするのは、無菌充填して酸素が入らないようにしているから。プラスチックを使わないと日持ちしなくなってしまうため、結果的に食品廃棄が増えてしまうのです。

たしかに編集部中にはこうした現状を知らない方もいるのでしょうね。

金丸さんそうなんです。プラスチックを海に捨てるのは問題ですが、リサイクル材料を使ったり、再エネを活用したりと今ある技術を活用することで、極端な脱プラではない方法で解決することができるはず。そういう事実を伝えると、「それなら、応援します」と言ってくれる方も実は結構いるんです。

たしかに編集部きちんと伝えればわかってくれる人もいる、ということですね。問題のある一面だけを捉えて攻撃するのではなく、対話することで理解できることもある、と。

金丸さん極端ではなく、中庸であることが大事なのかと思います。

しかし、組織が大きくなると対話が難しい部分もあります。企業としての責任を果たす活動やコミュニケーションをしようとすると、結果としてお客様との距離が遠くなってしまうこともあるように感じます。

たしかに編集部たしかに。組織の中にいる方の個人的な思いは、どうしても見えにくくなってしまうかもしれません。

金丸さん個人的な考えとしては、もっと現場で商品やお客様と向き合っている方が考えやアイデアを発信していく機会が増えたらいいなと思っています。

前例のない新しいことをやろうとするときに、最適解を知っている人はいません。だからこそ、自分自身の個性や価値観、これまでの経験から学んだことを活かして道を決めなければなりません。

そう考えると、多様性を活かして個人が活躍できる場所の1つとして、「Food Up Islannd」が果たせる役割も大きいのかなと思います。研究者と消費者の草の根コミュニケーションを通して、どうしたら地球に負荷をかけることなく食の未来がもっと豊かになるのかを一緒に考えていきたいですね。

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