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精神科医・名越康文先生に聞く、自粛続きの日々に負けないこころの健康の保ち方

朝から運動しないのは、3万円の化粧水を捨てているようなもの!

社領 自粛期間だけでなく、新学期や転職のような生きていく中での変化って、ワクワクするけどなんだか気持ちが削られたり、対応するのが大変だったりと、感情が疲弊しがちです。環境が変わったときに気持ちが不安定になるのには、何かメカニズムがあったりするんですか? 

名越 個人差が大きいし、おそらく複雑な要因が絡まっているので明確な説明はできません。でも、わかっている部分でいうならば、自律神経のバランスの崩れが一つの原因です。環境が変わったことで起きがちな対人関係のストレスで、副交感神経のパワーが落ちてきてるわけ。 

社領 副交感神経って、リラックスとかよく寝るための神経でしたっけ? 

名越 うん。そのパワーが落ちるとイライラしがちになるし、集中力が落ちてきて、明るい気持ちになれなくなる。でも副交感神経はちゃんと復活させることができるねん。それは単純な話、「運動すること」やね。 

社領 えー! 私、全然運動してないです! 

名越 落ち込んだ人って、気持ちが暗いのには何か高尚で、もっと根本的な理由があると考えがちなのよ。そんなこと考える前に、窓を開けて深呼吸して外を30分くらい歩き回って来てください。 

社領 30分でだいぶ変わるんですか? 

名越 ぜんぜん変わる。 

社領 うわ~変わるんだ! 自粛中、運動不足のまま気持ちが沈むな、なんでだろって思ってました(笑)。やっぱり運動かぁ~!

名越 その運動は午前中が一番大事やねん。午前中にカーテンを開けて日の光を浴びると、セロトニンが出始めるわけ。 

社領 セロトニン? 

名越 幸せホルモンって言われてるやつやな。だっさい言い方やなって思ってしまうけどわかりやすいわ(笑)。 

社領 (笑)。 

名越 セロトニンは、運動によって分泌量が増えるんよ。さらに、運動後14時間でセロトニンからメラトニンって物質が作られる。メラトニンは別名「自然の睡眠薬」と言われてるぐらい睡眠によくてね。つまり、例えば朝の8時に運動したら22時にはメラトニンが作られて、寝付きよくぐっすり眠れる。

社領 運動した日の寝つきが良いのは、セロトニンとメラトニンのおかげだったのか! 

名越 ぐっすり眠れると、からだを修復するホルモン、またの名をアンチエイジングホルモンって言われているホルモンが出やすい。結果、からだの細胞が修復されるし、副交感神経が活発に働くことで毛細血管が開くから、からだの隅々まで栄養とかホルモンが届くわけ。 

社領 へぇ~! 改めて聞くと睡眠ってやっぱりすごい! 

名越 だから、その状態で朝起きると、からだの修復がされていて若返っているし、気分はいいしで良いこと尽くめやねん。スカッと起きれるから「さあ今日も光浴びて運動しよか」ってなるし良い循環が起こるわけやね。 

社領 最近、化粧品とかでアンチエイジングしようとしていたんですけど、それってなんかめちゃくちゃ生ぬるいですね。 

名越 朝起きて朝食を摂らず、運動もしないのは、朝から3万円もするような化粧水をシンクに捨てているようなものやから。 

社領 うわー!! めっちゃ捨ててた!! 

名越 ソーシャルディスタンスを保った状態で外にいることはOKなんやから、これからは早起きして、まだ涼しいうちに歩いて、早く寝てみてください。ほな、気持ちもすごい安定しますよ。 

社領 ちょっとやってみます。いや、やれるのかな。やってみますって言っていつもできないからなぁ……。でもやりたい!! 

名越 ふふふ(笑) 人を避けて歩いてると、ここにこんなちっちゃい公園があったんやとか、ここの路地のボスはこの三毛猫やなとか、新しい素敵なことに気付くものですよ。こうやって聞くと「楽しそう!」って思うでしょ。

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