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いつか宇宙人を手のひらに。DIYで科学館を作った、羽村さんのモチベーションのありか

サイエンスは、不思議を解明する営み。

——地域交流ですか。具体的にはどんなことができるんでしょう?

展示を見たり、現役の研究者と話したり、ワークショップを楽しんだりすることができます。他にも不定期に、子ども向けの理科実験講座や、大人向けの“サイエンスカフェ”というイベントも開催しています。大人は「科学の講座をやります」なんて言っても、なかなか興味を持ってもらえないでしょう?もっと気軽な感じにして参加者を増やしたい。要はファンを作る。もっというと科学教の信者になってもらいたい(笑)。サイエンス×料理、サイエンス×化粧品のイベントなど、女性が興味を持ちそうなテーマも用意しているんですよ。

——信者はひとまず保留でお願いします(笑)。でも、料理は面白そうですね!どんなイベントでしょうか?

チョコレートのテンパリングやクリスマスのキッフェルンというクッキー作り、ワインと料理のマリアージュや、ビールに見えるゼリー作りなど、調理をしながら科学を学び、作ったものを食べながら交流できるイベントです。例えばあるクリスマスには、若いお母さんが興味を持ってくれそうな、サツマイモを使ったブッシュドノエルを作りました。焼き芋って甘くて美味しいですよね。でもサツマイモを電子レンジでチンしても、甘くなりません。それは、サツマイモに含まれる酵素がデンプンを糖化し甘くする温度に秘密があるんです。

サツマイモのデンプンを糖化する酵素は70℃前後でもっとも活発に働きます。焚き火や炭などで時間をかけて加熱すると、70℃前後でゆっくり加熱できるから甘くなる。一方電子レンジはその温度帯を一瞬で通過するため、でんぷんがあまり糖化しないんです。そんな話をしながら、実際にサツマイモを練り込んだブッシュドノエルを作って食べて「サイエンスを学ぶと、楽しく話せてサツマイモも美味しくなるね」と喜んでもらいました。女の人もたくさん来てくれて、私も楽しかったです。

——なるほどー。甘くなる科学的根拠をひもといていくわけですね!料理はサイエンスですね!

それはよく言われます。それに、「サイエンスってなんですか?」とか「これもサイエンスですよね?」とか。いろんな表現ができますが、私は、サイエンスは世界観だと思っています。“料理は料理”だけれども、その中から不思議なことを見つけて、「どうしてだろう?」と疑問を持ち探求するならば、料理もサイエンスの入口と言えるでしょう。同じように、くだもの狩りだってサイエンスの入口なんですよ。

——えっー?くだもの狩りも?

ただ採って食べるだけなら科学とは呼びません(笑)。例えばぶどう狩りはハサミを使いますよね。でも梨狩りはハサミはいらない。では、どうして違いが生まれるんだろう。そんな観察ポイントを見つけて探求すれば、科学の世界へ入り込めます。

それに、ぶどうは秋の味覚のイメージですが、実際の旬は夏。梨は幸水という品種がぶどうより早く店頭に並びますが、これは秋の様々なフルーツと時期が競合しないよう品種改良した結果で、実は秋に食べごろを迎えるおいしい梨はたくさんあるんですよ。そういう違いを感じたりするのもサイエンスのスタート地点。科学に苦手意識を持っているお子さんも、くだもの狩りなら連れ出せるし、楽しんでいるうちに気づいたら科学の入口に立っているので、オススメですよ。

——くだもの狩りなら、科学が苦手な私にもできそうです。だんぜん、サイエンスのハードルが低くなりました!

それは良かったです。あとはお子さん向けでしたら、絵本もオススメですね。「まほうのコップ」(福音館書店・ちいさなかがくのとも2008年7月号)という科学絵本があるのですが、うちの4歳の娘は、透明なガラスコップの後ろに入れたフォークが曲がって見える写真を見て、「やってみよう」と実際に試していました。他にも「ひとしずくの水」(あすなろ書房・1998/6/1出版)という写真集は、Exedraでもおすすめしていて、実験講座の教科書に使ったこともありました。絵本の読み聞かせは子どもにとっても大人にとっても刺激になりますね。

もうちょっとがんばれる人は畑もいいですよ。とはいえこれは1年くらい世話しないといけないので大変かもしれません。途中で投げ出しちゃうと、子どもの手前、カッコつかないですもんね(笑)。

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