誰よりも先に。この手に“宇宙のミジンコ”を乗せたい。
——そもそも、羽村さんはどうして宇宙人を見つけたいんでしょう?
高校生の頃「歴史に名を残したい」「モテたい」と思って、それにはどうしたらいいか考えたんです。ガリレオ、ニュートン、アインシュタインって、科学に明るくない方でも名前は知っていますよね。3人に共通しているのは宇宙を研究している物理学者だってこと。そうか、物理学者は有名なんだと。そして宇宙ならまだまだ謎に満ちていて、運の要素もあって、天才たちとわたりあえるかもしれないと思ったんです。
宇宙人を見つけたら絶対有名になれる。特に私は死ぬまでに手のひらに地球外生命を乗せてみたいので、夢をかなえるためには、探査機を飛ばしたいんです。日本だと何年かに1度できるかどうかの超ビッグプロジェクトですが、例えば日本人の30人に1人が科学館の年会員になってくれたら、自前で毎年でも探査機を飛ばせるんです。実現できたらイーロン・マスクやホリエモンに並ぶ有名人になれますよね!
——そのためのファンづくりなんですね。
そうですね。さっき科学は世界観と言いましたが、世界観は時代を経て変わっていくものなんです。例えば、みなさん小学生のとき「光はまっすぐ進む」と習いましたよね。これは19世紀までの世界観。ところがアインシュタインによって相対性理論が発表された20世紀以降の現代では、ブラックホールなど大きな重力を持つ天体のそばで光がカーブすることがわかってきた。そしてブラックホールの影の写真を見ることができるのは21世紀の世界観です。
最新の研究成果は、知ろうという気持ちがないと、なかなか一般の方には得られない情報です。だけどこれは研究者だけでなく、みんなの努力の証。たとえ研究に直接携わっていなくとも、例えば税金を払うことでみなさんも研究をサポートしているんですよ。だから本当はみんな知っておくべきだし、少なくとも知る権利はあると思うんです。この科学館がその役割を担えたら。
広く社会の困りごとを解決しながら、身近な科学と、最新の科学の両方を発信していく。一方で今まで誰も明らかにできていないこと、例えば宇宙人を見つけ出すことや骨のDNAを調べて生命の進化を探ることで、21世紀の科学の世界観を広げてゆく。人類共通の知の財産を増やしてゆく。宇宙に探査機を飛ばして、誰よりも先にこの手のひらに、ミジンコよりずっとずっと小さなものでいいから、地球外の生命体を乗っけたいのです。
——熱い情熱がビシビシ伝わってきます!羽村さんのように、ずっと探究心を持ち続けるには、どうしたらいいんでしょう?
大前提として、みんながみんな科学に興味を持ち続けなくても良いとは思っています。歴史が好きな人がいたり、スポーツが好きな人がいたり、多様性がありますよね。ただどんな分野でも、おそらく、何か目標を見つけたらいいのかなとは思いますね。
私の場合は歴史に名を残すため地球外生命を探しているのですが、知り合いの中には「●●みたいになりたい」と目標となる人物を描いている人もいます。どんな人も、壁にぶち当たることはあるでしょう。そんなとき目標があればきっと、「何くそ」ってその困難を乗り越える糧になると思いますね。
編集部のここが「#たしかに」
「疑問を持ち探求すれば、なんでもサイエンスの入口」という羽村さんの言葉は、まさに目からウロコ!苦手意識のあった科学の世界が、だんぜん、身近なものになりました。
「宇宙人は先に見つけたもん勝ち!」と目を輝かせながら話してくれた羽村さん。夢や目標があるって、生き生きと、力強く生きることなんだと、インタビューを通じ知ることができました。
最近夢も目標もあまり持てていなかった自分を振り返り、まずは、小学生の子どもと一緒に1から科学をやり直すべく、科学教に入信しちゃおうかな(笑)。羽村さん、ありがとうございました!
羽村さんが運営する『手作り科学館Exedra』のサイトはこちら。
http://selexedra.stars.ne.jp
取材・執筆:松村聡子 編集:#たしかに編集部
写真提供:柏の葉サイエンスエデュケーションラボ